トップ
−J-REITを考える(その3)−    
不動産価格とは何か?
不動産市場が成長していくためには、まず、不動産関係者の価格査定力を高めることが必要と考えられます。
今回は、実際の取引における不動産価格とはどのようにして決まるのかを説明し、売り手と買い手の間に介在する仲介業者は何をしているのかを話して、これからの不動産価格の求め方について触れたいと思います。

「不動産の売却価格は売主の思惑で決まる」  
一般に不動産は売りから始まります。  
不動産仲介業者も売り情報を重視し、売主からいち早く情報を得て、それを同業の仲介業者に流すことで買い手を探すのです。  
この時の売却価格は、売主側の事情と思惑によって左右され、仮に10億円で売りたいと言えば、仲介業者は12億円程度で売り情報を流しましょうという提案をすることが多いのです。  
では、この時の価格はどのように算出されるかが問題ですが、土地価格であれば、一種換算(建物の許容容積率で土地単価を割って、100%に該当する単価を求めます。例えば、許容容積率 200%の土地が100坪あるとしたら、一種換算で100万円/坪で計算すると、 100万円/坪×2×100坪=2億円となります)した価格が、何となく最近の取引事例に近ければ良しとします。  
建物付きの場合には、その建物から生じる年間グロス収入を売却予定価格で割って利回り率を算出しますが、その率の妥当性の検証はほとんどありません。 なぜならば、同業の仲介業者が見つけてきた買い手と価格交渉を行い、交渉が成立すれば仲介成立ですし、買い手の提示する金額が低ければ、再度売主に価格引き下げ交渉をすれば良いのです。  
このように、従来の不動産売買では本来の資産価値に基づく取引ではなく、売り手と買い手の思惑が一致した価格が売買価格になるというのが通例ですので、不動産仲介業者の価格査定能力は必要なく、いかに高く売るかが不動産仲介業者の能力とされていました。

不動産価格の一般的算出方法は?
価格の妥当性について仲介業者はあまり考えませんが、デペロッパー等がマンション用地を取得する時は、用地取得価格を吟味しなくてはなりません。 デペロッパーも、最終的にはマンション分譲事業収支を作成しなくては用地取得価格の妥当性が判断できませんが、簡易な算出方法もあります。
最も簡便な方法は、
(一種当の土地単価+標準建築費単価)×1.522=マンション分譲単価  
という算式があります。  
これで、暗算した分譲単価の市場競争力を考えれば、おおよその用地取得価格の目安が付きます。
一方、建物付きの不動産価格の妥当性を検証するには、このような簡便な方法はありませんし、 アバウトな数字は使えません。 バブルの頃であれば、建物の価値やそこから生じる収入は無視して、土地価格だけで取引価格を設定できましたが、今はそんな乱暴なことはできません。
そこで、次に、実際の不動産取引における実状をお話しながら、説明したいと思います。

<< 戻る 次へ >>