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−J-REITを考える(その3)−    

収益利回りから不動産価格を求める場合
最近では、収益利回り価格によってファンドへの売却を行う売主もおりますが、内容的な粗さも目立ちますので、ポイントとなる点を列挙したいと思います。
  1. 収益利回りは、NOIベース(キャッシュフロー)で年間利回りを算出する。

    仲介分野では年間グロス賃料収入数字を使用するケースも多いですが、グロス賃料では収益利回りを算出できません。 賃料等の収入から賃貸費用、公租公課等を引いた収益の数字が必要となります。

  2. 稼働率は、現時点の稼働率と過去の稼働率を表示し、安定的に推移すると考えられる稼働率を前提として収益を算出する。

    稼働率を期待稼働率で算出したり、フリーレント等が反映されていない賃料収入をベースにしている例もありますが、収益利回りの算出には実績数字を前提にする必要があります。

  3. 過去の建物修繕の記録を開示する。

    建物修繕計画があるのか無いのか、また、その実施状態がどのようになっているかは、重要な情報です。 修繕費用を抑制して、賃貸費用の低減化を図っている物件では、取得後の費用が嵩みますので買主としては避ける傾向にあります。

  4. キャップレートを意識する。

    キャップレートとは、年間NOI収益を不動産価格で割った数値ですが、物件用途や立地によってファンドの求める率が異なってきます。
    一般的には、
    ◇住宅>事務所ビル>商業施設
    ◇都心3区>都心5区>23区等
    となっていて、個別不動産によってキャップレートが変化しますので、キャップレートは固定ではないという認識が必要です。
以上の4点は、ファンドへの売却では必要最低限の項目で、いずれも根拠のある数字でなくてはなりません。
一方、実際の不動産取引では、数字の根拠が曖昧だったり、内容を精査すると信頼性のない数字を使ったりしている場合も目立ちます。  
また、キャップレートも従来の不動産屋的感覚で、一般的にファンドの求める率より低くても、誰かが買うのではないかという姿勢で価格を算出しているケースもあります。
ファンドのしくみを理解していれば、それ程大きな誤差がないことが分かりますが、現在の不動産仲介のレベルでは難しいのかもしれません。 

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