トップ
2003. 5. 1.Up Dated.
−J-REITを考える(その3)−    
不動産市場とJ-REITの距離
JREIT各社は今年に入って、更に物件取得を加速させる模様で、各社の大型物件の取得 が目に付きます。 しかしながら、その大半はオリジネーターサイドの協力による物件発掘になっているようで、いわゆる不動産仲介市場からの調達ではないという面があります。
JREITファンドの年間数千億円にも上る買い需要に対して、必ずしも従来の不動産仲介機能がコミットできていないのは、次のような理由があります。
−理由1:
金融・証券を中心とした不動産証券関係者から見ると、不動産仲介業者及び不動産関係プレイヤーへの信頼度が低い
−理由2:
不動産関係プレイヤーには不動産証券化の知識が乏しく、そのしくみが分からないこと、投資目的が分からないことなどによるミスマッチがある
−理由3:
多くの不動産仲介業者が、情報伝達による高額報酬という安易な業態のままで活動している
JREITファンドの中には、不動産業界を出自としているファンドもありますが、それらはいずれも大手デペロッパーであり、元々、一般の不動産業者とでは格差が大きく、一口に不動産業界と言っても似て非なるという面があります。 一方、不動産業界出身以外のJREITファンドでは、不動産業者に対する信頼度が低く、取引に積極的でないということがあります。このような状況を公平に見ると、多くは不動産業者に問題ありと言わざるを得ません。

将来的にJREITファンドが成長していくためには、現在のような一本釣りでの物件取得には限度がありますし、まして地方都市での不動産の取得が難しくなっていきます。
本来であれば、買い需要に素早く反応して、適切に動く集団があってこそ市場と言えるのですが、現状では、年間数千億円の不動産買い需要に対して、何ら反応も活動もできていないのが実状です。 不動産業界には数多くの団体がありますが、不動産証券関係では、昨年12月に社団化した不動産証券化協会(ARES)だけで、他の団体は勉強会すらできていないのが現状だと思います。
このままでは不動産市場とJREITの距離は、縮むどころかますます開いていきます。JREITを含めた不動産証券の未来を真剣に考えれば、現状のミスマッチや不動産市場の機能低下は深刻な問題でもあり、引いては、現在の不良債権処理も公的機関で抱えるだけに留まり、再生する方向に向かわないという危険性が感じられます。
次へ >>