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利益相反について
  
オリジネーターのメリット(2) 
オリジネーターが不動産企業、生保、金融機関の場合、自らが保有したり融資したりしている不動産の譲渡先として投資法人を捉えるのは常識ですし、現実に、設立後の保有資産にはこれらのオリジネーターから譲渡された物件が数多く含まれます。
このメリット(2)は、設立時の保有資産だけでなく、その後取得でも連続的に追求できますので減損会計圧力や不動産の不良債権化が進行している中では、大きなメリットでもあります。
但し、不動産を集めて賃料収益等から投資家へ配当する仕組みを持つ投資法人にとって、この取引自体が問題なのではなく、譲渡される不動産の質と価格がバランスしているかという取得の合理性、そして、オリジネーターが提供する不動産を選択する合理性があるかという点が利益相反の本質だと言えます。
不動産を売却したいオリジネーター側は、より高く売却することが自らの株主の期待に応えることであり、一方の投資法人は、より安く買うことが投資家の利益に繋がりますので、この間の調整を行う資産運用会社の判断がキーポイントになります。
前述したように、資産運用会社はオリジネーターが人材(出向形態が多い)と資本金を提供して設立した会社ですから、オリジネーターの意向を無視することはできません。
従って、REITの利益相反の主要な部分は、メリット【2】に関わる部分にあると言えます。

投資家の立場での判断者は誰か?
◇投資法人の執行役員と監督役員?
制度としては、投資法人の役員がその責任を負っていますが、投資法人は社員を雇用できず数名(3〜4名)の役員のみで構成されていますし、しかも不動産の専門家ではない場合がほとんどです。(弁護士、会計士等が就任する例が多い) 元々、投資法人は投資の受け皿として設立されていて、実質的な機能は持てませんので、わずか数名の役員に全てを負わせるのは無理があります。
◇不動産鑑定士?
投資法人の不動産取得に際しては、不動産鑑定評価が義務付けられていますので、必ず鑑定評価額が公表されますが、実は、この鑑定評価には強制力もありませんし、価格の公信性(第3者に対する対抗要件)もなく、市場価値の定義力もありません。 更に、鑑定評価書が公開されることはありませんから、投資家が内容を見て判断することもできません。

では、誰が、投資家利益を擁護してくれるのかと言うと、欧米の例を見れば、バイサイド(投資家側)アナリストになりますが、日本のREITには、存在していません。存在しない主たる理由は、日本では投資判断情報の収集に費用を支出するというビジネス感覚がないことが挙げられます。

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