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2003. 5.15.Up Dated.
−J-REITを考える(その5)−    
J-REITが信頼を得るために
JREITは、公募によって資本市場から出資資金を集めますので、投資を募る対象は不特定多数になります。 機関投資家、一般事業会社、外国法人、個人投資家など範囲は多岐にわたりますので、顔の見えない部分もあります。
誰に向かって情報を発信するのかによって情報の質も異なりますので、一口に情報開示といっても難しい部分もありますが、要は、社会に向かって情報を発信し信頼を獲得することを目的とする必要があります。

投資家(社会)の信頼を獲得することが、JREIT事業の要諦ですので、当然ながら日々の振る舞いや言動が大事になります。 信頼や信用は言葉だけで獲得できる訳でもなく、自らの日々の積み重ねによって醸成していかなくてはなりませんし、また、多くの人たちが日々の行動を見てくれるようにならなくてはなりません。 世の中は、不用意な行動や言動で、一挙に信頼を失う事もありますし、一方、地道な努力を重ねても見てくれていないということにより信頼が得られないこともあります。

今日のJREITを公平に見てみると、ファンド側の日常の振る舞いに対する注意力がやや弱いこと、そして、社会的注目度が低いという点が挙げられます。
実際にファンド側の話を聞いていると、不動産業界という狭い世界の中で振る舞うという習慣から脱却できていない部分も目に付きます。 不動産証券は、不動産業界だけのものではなく、金融・証券という新しい分野の方達の参入によって作り出されたものですので、異なる感覚や見方を持った人たちの存在を常に意識する必要があります。
不動産業界の出身の方は、不動産が専門でない金融・証券の方達への説明に難しさを感じて、ややもすればヒステリックになってしまう場合もあると思います。 また逆に、金融・証券出身の方は不動産業界の不透明性や説明能力の低さに信頼性を損なう気持にもなりかねません。
このような問題は、一朝一夕には解決できないものの、まず問われるのは、JREIT事業を起こしたファンド側の日常行動だと思います。 上場したJREITファンドの資産運用会社にはIRセクションがあって、専任の担当者も置かれていますが、IRセクション任せでなく、全員がIR担当なのだという意識と行動が必要です。 資産運用会社は同様な趣旨の話を傘下のPM会社やBM会社にも言っていると思いますので、自らも自分達の行動と意識を再確認する必要があると思います。

また、オリジネーターサイドでのJREITに対する発言にも注意が必要です。
元々、JREITは投資家のためのしくみですので、オリジネーター側は発言内容の善し悪しではなく、第3者としての立場を強く意識しながら一投資家としての範囲での発言が望ましいのです。 オリジネーターの協力なくしてはJREITを立ち上げることも運営することも難しいという現実がありますので、ややもすれば一投資家という範囲を逸脱しがちになります。 他人というのは、様々な見方をしますので、元々誤解を受け易いという前提で振る舞わなくてはならないのです。 JREITが信頼を得るには、何よりも当事者である資産運用会社等の行動と言動によってしかありません。 「李下の冠、瓜田のくつわ」と言うように、新しい商品であるJREITでは振る舞いに気をつけることが、今、重要だと感じています。
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