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−J-REITを考える(その2)−    
J-REITの内部成長

ファンドにとって、内部成長は、地道な努力の積み重ねであり、PM業者等を含めた運用体制の能力が直接反映される部分です。内部成長というのは、日々の運用の中から獲得していくものなので、短期的な見方は適切ではありません。
例えば、空室部分を埋めるということでも、内部成長は図れますが、闇雲に稼働率上昇を目指すことは是としないのです。
JREITの保有物件では、90%以上の稼働率を保っているオフィスビルが多いですが、この場合、空室となっている10%をどのようなテナントにどのように貸すかという細かな見方も必要となります。単純に、入居希望のあったテナントに、順次貸して稼働率を上昇させるという物件もありますが、 残余の10%を一括借りしてくれるテナントを待つという方法もあります。また、既存テナントからの増床希望に備えて、5%程度の空室率を確保しておくということも考えなくてはなりません。
この辺りは、PM業者の腕の見せどころで、ファンドの安定と現在収益、そして将来の収益増という面から考えて動かなくてはなりません。
このようなPMは、目先の稼働率を限りなく上昇させるという転売型のファンドとは異質のPM業務であり、本来のPM業務だと言えるかもしれません。

一方、最近のJREITの内部成長では、BM費用(ビルメンテナンス費用)の削減が目に付きますが、本来は、この方法も手離しでは評価できません。
大半のJREITファンドではBM業務を請負形式で発注しているため、削減は請負金額のグロスで交渉した結果です。 資産運用会社の説明を聞くと、削減交渉は「エイ、ヤッ」ではないと言っていますが、建物のハードメンテナンスは資産価値の維持にとって重要度が高いですし、ボディーブローのように効いてきますから、適正な形で更正されたという説明が必要と思われます。

このように内部成長については、見るポイントも専門的になりますし、視点によっても評価が分かれますが、資産運用会社の運用姿勢を写し出す鏡でもあります。
特に、資産の長期保有を前提としているJREITでは、費用の多寡だけを見るのではなく、内容を細かく精査することも必要ですので、株式アナリストの方々も派手な外部成長に注目するだけでなく、内部成長についてチェックしていくという姿勢が求められますし、これによりファンドの健全な成長を促すことにもなります。
内部成長については、現在どのファンドも規模を拡大中のために、質的な面はやや後回しの感もありますが、本来は内部成長がファンドの格差を表します。 関係プレイヤーが内部成長に注目するようになれば、PM業者も育ちますし投資家も目も肥えてきます。 その意味でも、内部成長の重要性をもう少し広められればと思っています。

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