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REITのLTV
  
 さて、ここまでは、REITの解説書にも書いてある内容ですが、実際にはどうなのかと言うと単純ではない面もあるのです。
 現在のJREIT市場では、各銘柄に対して配当金を上乗せの要求が強いですし、また、配当利率に連動して株価が上下していますから、株価を上げるには、配当金の原資となるキャッシュフローを増加させることが必要となります。
ところが、今日のオフィスビル市場や不動産賃貸市場全体を見ても、賃料水準は上昇傾向にありませんし、稼働率も全体的には下降気味です。
一方、不動産の売買価格、特にJREITが欲しがるような不動産の価格は上昇傾向にありますから、ますますキャッシュフローを増やすのは難しくなっています。
それでも、市場からは外部成長による配当金の増加が求められていますから、不動産としては、リスクの大きい、立地に難ありの物件や築年数を経た物件ではあるものの、利回りの高い物件を取得せざるを得なくなります。
これでは長期投資という面で見ればマイナスになりますから、リスクの大きい不動産を購入するよりは、現在の低金利を利用したレバレッジ効果を使って配当金を上昇させる方が賢明だとも言えます。
現在のJREITにとって、一度購入した不動産は、簡単には売却出来ませんし、築年数の経た物件は建替えという難しい問題も抱えてしまいますから、それならば、金利状勢を見ながら、機動的に動ける余地のあるLTVで、当面の投資家の要望に応えておくという方法も、現実的ではあるのです。
本来の長期投資の視点を持ったREIT投資から見れば、いたずらに配当金の上昇を期待するのは的外れでもありますし、それよりは、より優良な資産を抱えてもらって、長期にわたって安定的な配当を実現してもらうという要求がノーマルですが、今のJREIT市場は、必ずしもそうではありません。
とりあえず、目先の配当金を重視し、株価が上昇したところで売却して売却益を狙うという株式投資と同じスタンスで見ている投資家も多いですし、オルタナティブ投資としか見ておらず、今のうちに稼げるだけ稼いでおいで、魅力が無くなったら他の投資商品に乗り換えるというスタンスの投資家も居ます。
資産内容や資産運用能力の吟味を行わず、配当率だけで銘柄を見たり、株価を算定したりしている状態では、JREITは育つどころか疲弊する一方になります。
これでは、長期投資という視点で見ている本来のREIT投資家にとっては不本意な方向ですが、声が大きいのは従来の株式投資スタンスで見ているデイトレーダーや、所詮、一時避難のオルタナティブ投資としてしか見ていない投機筋です。
この傾向は、かつて米国REITでも見られた状況ですが、JREITでもそろそろ始まっているようです。日本の投資家はシャイだと言われていますが、いつまでも発言しないでいると、とにかく株価を上下させることで収入を得ている人達の勝手にさせてしまうことにもなりますから、そろそろしっかりと考えて行動を起こすべき時なのです。

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