◇トップ |
個人投資家とREITの関係 |
このコラムでも取り上げましたが、オリジネーターとの利益相反はその仕組み上からも完全に排除できません。 REITの情報開示は、銘柄側からの一方的な告知活動の範囲に留まっていますから、どのような取引も外部からのチェックは働きません。 最近では、不動産鑑定価格以上で不動産を取得する例も出てきていますが、これにも明確な説明はありませんし、オリジネーターとの取引も内部審査を経たという報告だけです。 それでもREITが順調なのは、配当率が良いということで、大口投資家もうるさく言うよりも、当面の配当率に関心が集まっています。そのような状況を冷静に見れば、REITが一般個人投資家向けの商品なのかということには疑問が湧きます。 また、角度を変えて見てみると、REITの一般向け解説書や手引書という類も少なく、商品を知ろうにも方法がありません。 REITの業界団体というのもありますが、こちらは、専門家向け資料は発行しますが、一般向けの啓蒙活動はできていません。 こう考えると、どこも本気で個人投資家の拡大を目指していないという指摘ができます。 一方、REITが保有する不動産は全国で170物件に及び、総額も軽く1兆円を越えていますし、最近では、不動産の取得方法も開発型やSPC経由等と高度化していて、一般投資家では取引の実態が分かりません。 REITの資産運用会社は不動産の専門家ですので、より高度な手法を駆使して資産運用を行ってきますので、資産運用の実態も一般から見れば不透明になりつつあります。それでも、REITに進出してくる企業は多く、銘柄数も増えてきますし、毎年既存銘柄の増資が繰り返されますので、市場から調達する資金は拡大する一途です。 現在、この方向を修正できる力は見当たりませんので、不本意ながら行政に頼るしか方法がありません。 REITの資産運用会社は金融監督庁の認可を受けていて、監督権限もあります。 既にある銘柄の資産運用会社に対して監査を行ったようですが、その結果が公表されたのかどうか不明です。 一つの監査には2ケ月ぐらいの期間を要するようですから、金融監督庁がREITに対して頻繁に監査に入ることは難しいようですし、不動産取引の実態を把握することは困難な作業だと思いますので、行政にも限界があります。 このように見ると、REITは個人投資家層を誘引する状態にはないとも言えます。 REITが本来期待されている役割は、一部の利益に供するだけでなく、不動産という社会財を新しいサイクルの中に円滑に取り込むことですが、その道はまだ遠いと言わざるを得ないのです。 |
<< 戻る |