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 REITの未竣工物件の取得について
  
一方、このような未竣工物件の取得は、REITの投資家から見ると、判断しがたいのも確かです。
既に、稼動しているオフィスビルであれば、NOI利回りや物件の立地、建物のグレ−ド等である程度の判断ができますが、未竣工物件では、全てが予定でしかなく、結局は不動産開発事業の妥当性を判断するしかありません。
こうなると、有価証券投資の見方は通用せず、不動産開発投資という、至極、専門的な分野に入ります。
REITを不動産投資の一形態だという理解を持っていれば、REITが不動産開発投資を行うことに違和感はないと思いますが、株式のような有価証券投資の見方では、不動産開発リスクを読む事ができませんから、投資家にとっては、ますます情報が少なくなります。とりあえず、資産運会社を信用するということでお茶を濁す投資家も居ると思いますが、資産運用会社はわずか15名前後の社員しか居ませんので、不動産開発の体制としては無理があります。
こうなると、オリジネーターのバックアップなくしては、開発型案件の投資はできませんので、今回のNBFのように、三井不動産がプロジェクトマネジメントをしている案件に偏らざるを得ません。
オリジネーターの関与が深まれば、利益相反の問題も再浮上してきますので、ますます外部チェック機能が必要となりますし、同時に、専門的事柄を平易に解説してくれる情報も欲しくなります。
投資家から見れば、もっと分かりやすくというのがREITへの要望だと思いますが、投資家への配当を確保するには、より専門的な方向へ向わざるを得ないという矛盾が生じてきていますので、段々と隘路に入っていく危険性もあります。

REITの最近の状況を見ていると、不動産開発リスクを伴う開発型案件への取り組み、そしてオリジネーターとの緊密化という方向に進んでいますが、市場関係者はどのような対策を考えているのでしょうか。
地価の値上りに依存している時代ならともかくも、今日のように運用収益を見込んだ不動産投資は高度な専門性を要求される分野ですので、投資家は資産運用報酬を支払って資産運用会社に委託していますが、あくまでも運用フィー(手数料)ですので、投資リスクは全て投資家に帰属します。従って、運用報酬の対象となる運用業務がどのように行われているのか、業務遂行の妥当性がどうなのかは、投資の必須情報なのです。 特に、今回のような未竣工物件の先行取得では、投資家に対する分かりやすい説明と不動産開発投資の妥当性の検証が必要です。
これからも、REITの資産運用会社は、より専門性を発揮して資産取得や資産の運用を行っていきますので、これらの経過をどのように投資家に説明していくのかという具体的方策が求められます。
このコラムでも何度か取り上げましたが、筆者は、第3者によるモニタリングとモニタリングデータの公開こそが投資家と投資法人を繋ぐブリッジになると考えていますので、このようなイベントを機会にして、早急に整備機運が盛り上がることを期待したいと思います。

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