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2003. 9.25. Up Dated.
不動産取引価格公開制度と地価公示制度について  
  
最近の不動産業界では、国土交通省が発表した「不動産取引価格情報の公開制度創設」という国土審議会の提案に揺れているようです。
簡単に言うと、個々の不動産取引の成約価格をインターネット上で公開しようという案に対して、個人のプライバシーの問題を盾にして、不動産業界が反発しています。
確かに、業界が主張している個人情報の問題もありますが、本音は、成約価格という実際の相場情報が公開されることで、業者の優位性がなくなるということが主たる理由だと思います。
一般消費者は、売り出し価格や広告表示価格は、雑誌やインターネットを通じて入手できますが 実際に売買された価格は分かりません。
一方、不動産仲介業者は、レインズという業者間取引ネットワークを通じて、実際の成約価格を検索できますし、自分達が扱った仲介物件の成約価格も集積しています。 この情報の優位性によって仲介業者が活動していて、その結果、仲介手数料の収入が確保されているという理解からの反発だとも考えられます。
このような情報ギャップを利用したビジネスは不動産業界だけに限ったことでなく、様々な業界に共通していますので、不動産業界だけを責める訳にはいきません。
一方、国土交通省側もそれなりの大義名分を言い立てていますが、予算獲得と自分達の領域の拡大という意図も感じられます。
国土審議会が言うような、取引価格の公開によって、一般消費者に基準を明示して取引を活発化するということならば、不要という意見を抱えながら連綿と続けている地価公示制度を同時に廃止するという見識も必要です。
実際の不動産取引価格が公開されるようになれば、特定の不動産鑑定士が行う公示地価の発表は意味がありませんし、まして土地価格のみを対象とした公示地価は不動産投資には役立ちません。 とは言っても、国土交通省が一部の不動産鑑定士の既得権である地価公示制度を廃止することは考えられませんし、今回の制度も創設されれば、外郭団体の特殊法人が潤いますので省益に叶います。
本来、成約価格情報等は、レインズを利用している不動産業界団体等が統計的にまとめて発表するとか、個々の取引情報を若干加工して外部へ供給するなどすれば事足りることで、行政が敢えて介入する必要もありません。
公示地価も不動産鑑定士協会等が補助金等を使って自主的に作成し公表する程度の資料ですから、元々、行政が多額の税金を使って行う意味がありません。
このようなことは、不動産行政に限ったことではありませんが、何かと理由を付けては、税金を使う算段ばかりする行政には、極力、不介入という前提で新制度や施策をチェックする必要があります。
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