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羊頭狗肉
  
何故、九州の基幹産業群がこんな話に乗ったのかは私には分りません。
例えば「九電工」が上場によって得る利益は最大で7500万円程度ですので、「九州電力」がこの利益を欲しさに乗ったとは思われません。
一方、「福岡地所」は特別目的会社に約215億円という膨大な有価証券売却益をプール出来ますので、この仕組みの価値はあり余る程あります。
不動産業の福岡地所は非上場会社で、直近の年間売上高は100億円程度の会社ですので、利益を売上げの倍以上も出してしまう訳にはいかなかったのだと思われます。
いずれにしても、JREIT進出で一不動産会社が200億円の利益を手にすることに結果的にせよ加担する形となったのが、九州の有力企業と地銀という構図です。
この投資法人は、目論見書冒頭には「Act Local, Think Global」という標語を掲げ、地域活性化を目指して九州の有力企業が参集して立ち上げたという体裁を持っていますが、売出の目論見書を読むと、バブル時のゴルフ場の立ち上げと同じように見えます。
実際に配当金が出るので、ゴルフ場の会員券よりは良さそうですし、ゴルフ会員権の縁故募集は募集金額が一般募集より低いだけで、名義書換は一定期間停止されていますので、JREITを使ったこの仕組みの方が遙かに旨味があります。
不動産業者が転売利益を追求する事は当然とも言えますから、「福岡地所」については何を言っても仕方ありません。
私が言いたいのは、このような不動産業者の企てに乗った企業の顔触れです。
そして、この仕組みを可能とする為に「日本政策投資銀行」という公的金融機関までが種となる資金を融資していることです。
目論見書を読んで「ついにJREITもこうなったか」という想いが募りました。
かつての不動産バブルは不動産業者だけでなく、金融機関や一般事業法人までが不動産になだれ込んできた事で起きましたが、JREITもその様相を呈しつつあるようです。
JREITの登場からウォッチしてきた身としては、何とも言えない不快感とともに、企業の情け無い実態を見せられたようで悲しくなりますが、私はREITアナリストとして活動していますので、このような感想だけで終る訳にもいかないため、次回のコラムでは、もう少し投資法人の保有資産の内容についても触れてみたいと思います。
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