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2003. 7.10. Up Dated.
−REITの今後を占う−    
  
最近になって、株式市場に勢いが戻りつつあり、また、長期国債の値下がりによる長期金利の上昇と債券市場にも変化が起きています。
この一連の動きには、元々、債券市場に偏重していた資金が株式市場の反騰により正常な形で投資分散を行おうとする自律作用もあると考えられます。
一時は、10年物の長期国債の金利が0.3%程度まで下がるなど、明らかに行き過ぎの感がありましたので、株式市場に多少でも回復の兆しがあれば、資金が戻るのも当然だとも言えます。

「それでは、REITはどうなるのか」が今回のテーマですが、かつては株式以外にはこれと言った投資先がない状態が、債券市場の整備により、債券というローリスク・ローリターン商品が登場したことで、資金の流れが変わり、ブーム的に債券市場が膨れ上がりました。

元々、投資市場をハイリスク・ミドルリスク・ローリスクと分類するには、その前提として投資家が投資分散を意識した資金供給を行うことが必要です。
信号に例えれば、赤・黄・青と3色があって、色に応じた行動があるからこそ機能します。 赤信号しか機能しないとか、青信号以外は見ないという状態では信号にはなりません。

これと同じように、株式市場も債券市場も必要ですし、その市場に応じた行動が求められます。
ところが、株式と債券という2択だけでは、人々の行動はなかなか合理的になり難いのも確かなのです。 人間は、2択の状況では、冷静な判断よりは感覚的な判断をしがちですし、付和雷同にも陥りやすいのです。
そこで、3番目の選択肢としてミドルリスク型のREITが認知されれば、投資家の行動が論理的な判断に向かいますし、資金移動の流れも穏やかにもなります。

但し、第3の選択肢になるには、現在のREIT市場は規模が小さいという問題があり、流動性を見れば、機関投資家の投資先としては不十分かもしれません。
しかし、米国の例を見ても、REIT市場が株式市場や債券市場と拮抗する規模にはなっていませんので、元々、3大市場として並立しなくては機能しないとする考え方には無理があります。
成熟した投資市場を持っている米国でも、REIT市場の規模は19兆円程度と、その規模は他の投資市場に比べると決して大きくはないのです。
更に、単純に日米の投資市場規模を比較するのではなく、投資分散という行動に慣れていない日本では、投資家が投資分散を考える機会になる規模という見方も必要です。
この視点で見れば、JREITも既に存在価値を持ち始めているとも言えますし、現在の2倍程度の規模(1.5〜2.0兆円)でも、年々拡大が約束される市場であれば、充分な存在価値があるとも言えます。
最近の日本の投資市場の変化を、投資行為を科学的に考える契機になるとすれば、REITの必要性と存在価値が認知されるかもしれません。
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