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−J-REIT株価推移をどう見るか(その2)−    
 
今後のJ-REIT株価の推移

今後の株価の予測を行う前に、なぜ株価が上昇したのかを分析しなくてはなりません。  

株価上昇要因その1   
政府が実施した投資減税の一環で、JREITの配当金への課税が20%→10%に軽減された上に、従来の配当金額の多寡による税金の徴収方法のバリエーションが整理されて源泉徴収に一本化されたことで、配当型投資商品であるJREITの魅力が高まったことが挙げられます。(税率の軽減と税金徴収の簡素化)   
特に、配当課税税率の軽減は実質的な手取配当金を増やしますので、単純計算で株価が12.5%上昇しても従来の配当金と変わらない点が大きな要因です。また、JREITでは投資法人への法人税課税がありませんので、資産運用利益に対して、トータルでも10%の税金しか掛からないという、不動産運用事業としては抜群の優遇税制があります。 即ち、JREIT投資家にとってはファンドの利益(経常利益)がそのまま投資家に分配されて税金を10%引かれて振り込まれてくるだけという投資の簡便性が実現したのです。   

株価上昇要因その2    
日銀によるJREIT購入の検討が発表されたことで、JREITという投資商品の認知度が高まったことと、商品の信頼性が増したことによる、投資資金の吸引による株価上昇があります。    実際に日銀がJREITを購入するか否かよりも、一般的な認知度が低く、かつ投資商品としての信頼性が分からないということで投資を見合わせていた機関投資家などにとっては、日銀の購入検討によって投資メニューの一つとして加わりつつあると言えるのです。特に、今年に入ってからの機関投資家や金融機関の動きにそれが表れています。   

株価上昇要因その3
MSCI指数へのJREIT銘柄の組み入れが発表されたことで、主に法人投資家の投資姿勢がJREITに対して積極的になった。 MSCIとはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルの略で、MSCI指数とは世界中の分散投資家やグローバルに資産運用を行うファンドマネジャー向けに提供される信頼性の高いベンチマ−クです。 この指数構成銘柄にNBFとJREの2銘柄が組み込まれた事で、海外投資資金も増えるのではないかという好材料に反応した買いが増えた事も挙げられます。

以上の3つの要因をみると、具体的な上昇根拠は配当課税税率の軽減だけだとも言え、他の2つはJREITの認知度と信頼度の上昇により、ようやく投資商品メニューの一つとして検討されるようになったという初期的な段階での上昇要因です。
従って、減税という具体的な要因だけであれば、次の減税までは変化要因が少ないと考えられますが、認知度・信頼度の向上による投資家の新規参入という要因は、今後にも影響を与え続けますので、JREITへの投資家がしばらくは増え続けると考える方が自然です。
こうなると、上場資産規模の小さい(約5,600億円)のJREITでは慢性的に玉不足となり、株価を押し上げる要因になります。
一方、最近の市場の好調を見てとって、JREITの既存銘柄の増資も現実化してきますし、新規参入ファンドの動きも活発化しますので、投資口の追加発行や新規発行によって多少は緩和されるかもしれません。
ここまで見ると、JREITには好材料しかないように思えますが、内実は必ずしも良いことばかりではありません。

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