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2023.11.10.Up Dated.
マネーサプライの減少

 マネーサプライとは以前の呼称で、この言葉はマネーストックの指標一つで、市場全体に供給される通貨の量を測る指標の事です。
今は、M2マネーの流通量の指標を使う場合が多くなっていますが、MIは現金と預金通貨を表し、これに定期性預金等を加えてものがM2です。 M3はM2に郵便局・農協・信用組合等の預貯金や金銭信託を加えたものになります。
一般的にはM2マネーで市場の供給量をみていますが、米国のM2マネーの指標を見ると、 大幅に減少していて、2003年は前年同月比に比べて減少しています。 M2マネーが減少しマイナスに転じたのは実に100年振りで、前回は世界大恐慌の時です。
米国はコロナショック時の量的緩和政策によって、中央銀行が民間の保有している国債を多量に買って市場にマネーを供給しましたが、今は逆に国債を多く発行して市場からマネーを吸い上げています。
この状態は景気が過熱している時に行われる政策ですので、米国は景気が過熱していると見ていることになります。
この前提はかなり怪しく、実態は景気後退している事を示す指標もいくつもあります。量的緩和政策を採れば金利は低下しますが、金融引き締めでは金利は上昇しますから、今の米国は間違いなく金融引き締め政策を採っていますが、本当に引き締め政策で良いのかという指摘が市場関係者からも数多く出されるようになっています。
今の金融引き締めとも言える状態を、別の角度からみてみると、米国は国債を大量発行して資金調達をしなければならない台所事情があります。 ウクライナへの援助に続いてイスラエルにも援助しなくてはならず、いくら資金があっても足りないぐらいの状態です。即ち、単純に米国は資金が必要だから大量の国債を発行しなければならず、特に金融引き締めの為ではないとも言えます。
国債の大量発行は金利も上昇させますから、米国の金利は上昇していますが、これは副産物とも考えられます。
このような米国の資金事情によって、M2マネーの供給量が前年比でマイナスになっているのですが、金融機関が貸出基準を厳しくして融資を絞っていることもM2マネーの減少をもたらします。
市場から国債発行によってマネーを吸い上げていますから、せめて金融機関が融資残高を大きく伸ばしてマネーの量を増やすべきなのですが、これが簡単に出来ないことが今の米国の病巣になりつつあります。
兎に角米国ではマネーが不足していますから、中小銀行等は預金が引き上げられてしまうとマネーが無くなり破綻するしかありません。 メガバンクもマネー保有量は相対的に多くても同じような事情ですから、預金引き出しに備えなくはなりません。
先週米国の4大銀行でシステムの不具合が起こって預金が引き出せなくなり、週末挟んで5日間は復旧しませんでした。これもシステム不具合よりは、マネーの不足が真の原因の可能性もあります。
更にシティグループ銀行が1万人の大量リストラを発表しましたが、これもマネーが少なくなっている為に社員の給料が払えなくなっているのではとも言えます。
このようにいくら数字上で利益があっても、現金が調達できなければ資金繰りは詰まってくるのです。
このM2マネーの動きを見ていると、納得できる現象がいくつもあるのが実態です。 日本もM2マネーの量は減少していますが、量的緩和政策は続けていますから、市場でマネーが不足してしまう状態ではなさそうですが、量的緩和の副作用として円安になるのは仕方ありません。
それでは、今後の動きがどうなるかですが、米国は国債の大量発行が続きますから、マネーの減少は加速して、何れは市場でマネーの取り合いになる可能性があります。
既に米国では今年に入って6行の金融機関が破綻しましたが、これは今後も起こることが十分予想されます。
米国はこれだけ厳しい状況にあるのですから、中央銀行が大量に紙幣を印刷して市場に供給すれば良い訳ですが、これが簡単に出来ないからこうなっているのです。
日本も紙幣は5千円札・千円札と硬貨は減少していて、1万円札だけが若干増えているようですが、米国の状況をみると日本もマネーが少しずつ不足してくるかもしれません。
例えば年金が支給されるタイミングで銀行のシステム不具合によって何日か引き出しが出来ないという事になればかなり疑われる事になります。
そしてこの状態が続けば資金繰りによる倒産(黒字倒産)に繋がってしまい、国が支払いストップ状態になるという可能性もゼロではありません。(米国では一時的な支払ストップは過去に何度か起こっているが、支払いストップ期間が長く続けば倒産と同じになる)

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