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2023. 6.30.Up Dated.
相場の異常は何を表しているのか

 ここ最近の株式市場の動向を見ていると、まさに異常とも言える状態になっています。日経平均株価が6/28は1日で656.66円値上がりし、過去4日間で値下がりした1,036.81円分の60%以上を一営業日で回復しました。当然6/29も値上がり基調で、4日分の値下がり幅の大半を回復するだろうと考えられます。
この相場動向を見てどのように思うかですが、殆どの人は変だと見ると思います。今の相場は1980年代後半に起こった不動産バブル以来史上2番目の水準に達していますから、今はそんなに経済が良いのかという不審感だけが残ります。
不動産バブル期には、私は不動産会社に勤務していましたからよく覚えていますが、まさに狂乱の時代でした。 一般人まで不動産投資に手を染めていて、金融機関は借り手の収入に関係なく、不動産の価値だけで融資をしていましたから、当然借り手の返済能力は無視していて、不動産の転売だけを当てにした融資を積極的に行っていました。
当時今のメガバンクの支店から相談を受けたことがあり、融資一覧と担保物件のリストを見せられて、この融資の適否を尋ねられました。大半が担保物件の価格査定が甘く、不適切融資と断定しましたが、元々金融機関では不動産が分かるはずもなく、不動産担保融資は無茶だとアドバイスしました。
この金融機関は未だ正気が残っていたようですが、S銀行などはこんなものではなく、融資競争にこの金融機関は大きく負けていました。
不動産に関する異常さは他にも沢山あり、普通のサラリーマンが自宅をオフィスビル用地として買収されて、10億円以上のお金を手にしていましたので、この資金の運用の相談に来られたこともあります。私は、先祖から受け継いだ土地建物を失ったのですから、お金の事よりもその事を考えてこれからどうするかを考えるべきではないですかとアドバイスした事もあります。
当時の世相は更に異常で、サラリーマンが銀座の高級クラブに頻繁に通っていて、帰りはタクシー券を使って帰宅していました。企業はタクシー券を社員にばら撒いていて、使用使途もチェックしませんでしたから、接待費天国とも言える状態でした。
こういう世相でしたから、バブルが起こっても不思議ではありませんが、今はどうでしょう。とてもそんな状況ではなく、金融機関は逆に融資を絞っていますので、過去50年間に起こったことと比べると、正反対の現象を呈しています。こんな株式相場は、未曽有の異常状態だと言えますから、一体何が起こっているのかを考える必要があります。
異常と感じたら、それを探らなくてはなりませんが、人任せやマスコミ任せにしていたら何も分かりません。
説明としては、相場そのものが世の中の実態と乖離していますから、これはフェイクだと見ることが出来ます。私達はフェイクの情報に踊らされようとしているのだと感じれば、そこから新たな視点が生まれます。 誰が何の為にこんなフェイクを仕掛けているのかという問いにまで至れば、後は与えられていた常識を離れて考察をすれば、更に実態が見えてきそうです。
見方を変えて、これだけ変な事が目の前で起こっているのは、何かを気付かさせる為と考えることも出来ますから、個々人が自分の感性と判断で世の中を見るようになることを狙ったサインだとも考えることが出来ます。


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