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2022.11. 4.Up Dated.
世界の金融市場

 米国FRBが今年に入って0.75%の利上げを4回連続で行いました。一部では今回の利上げ幅は縮小するのではないかとの観測もありましたが、インフレ対策の手を緩めないということで、0.75%の利上げに踏み切りました。これにより米国債利回りが上昇することになり、10年債利回りは直近で上昇し4.12%になっていますが、何れは4.5%程度まで上昇すると思われます。
債券市場では米国債や英国債、欧州各国の国債価格が下落していますので、今後も米国債価格は下落していくと考えられます。
米国債の大量保有国である中国は保有分の売りを加速していますし、日本も円安対策で保有米国債を売却しています。日本の生保等の機関投資家も今年に入って米国債の売却を始めていますし、下半期も引き続き売却の方向となっていますから、米国債の大口買い手であった日中が売りに転換したことで、債券市場の需給関係は更に悪化していると考えられます。
このため米国債価格の下落は止まりませんから、FRBは利上げをせざるを得なかったとも言えます。
米国債価格が下落しているにも拘わらず、ドル高というのも奇妙ですが、この辺の実態はよく分かりません。

米国の金利が短期でこれだけ変動すれば、色々な所に弊害が及びます。 英国のように国債暴落によって年金基金が行き詰ってしまい、急遽英国の中央銀行が国債買い入れを行ったように、米国も米国債の買入を余儀なくされる可能性もあります。
このような事態になれば、無秩序な金融政策によって世界の債券市場は大崩れしてしまい、下手をすれば金融崩壊も招きかねません。
欧米の国債価格の下落は世界中の機関投資家に損失を与えますから、その結果金融機関の破綻も起こります。
今は非常に際どい状況にあるとも言えますが、一方で日本国債は日銀のイールドカーブコントロールによって、10年債は0.25%が上限になっていることで、機関投資家間の取引が成立しない日も増えています。
それでも欧米に比べれば、日本は未だ穏便でインフレ率も2.8%とそれ程高くはありません。ここの所の日本政府の発表は信用が出来ませんので、実態はもう少しインフレが進んでいるのかも知れませんが、日々の買い物で価格が大きく上昇している感覚はありません。(欧米では日々の買い物でインフレが実感できるようです)
冷静に欧米の債券市場をみれば、危険な兆候がいくつも出ていますので、何れは金融崩壊するのではという観測もかなり出始めています。

私もその予測していますが、更に深刻な問題として、既にドルの信頼が崩れているのではないかという懸念です。ドル高と称して、円・人民元・ポンド等が通貨安になっていますが、その大本であるドルの信頼が無くなっているとすれば、世界の主要通貨は全て信頼を失っていると考えることが出来ます。
ドルやポンド、ユーロは支払い手段としては弱くなっていて、決済手段としての利用が制限されたことで、欧米はインフレを起こしていると見ることも出来ます。石油や天然ガスもドルやポンド、ユーロでは新規購入が出来ないのではとも疑ってしまいます。これが本当だとしたらとんでもない事ですが、今は何が起こってもおかしくない時代とも言えますので、色々な可能性を頭に入れておく必要がありそうです。


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