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2021. 6.18.Up Dated.
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人のTOB

 インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(略称;IOI)から訳の分からない発表がありました。
スターウッド・キャピタル・グループによるTOBが仕掛けられ、これにIOIは強く反発し、スポンサーへ対抗策を要請してTOB阻止しようとしていました。
結局、スターウッドによるTOBは応募する投資家が少なく不成立になったようですが、当初から私はこのTOB不成立になる可能性が高いと予想していました。(不成立の理由は資金不足だと考えていました)
TOB不成立によってこの件は落着したかと思いましたが、間髪を入れずに今度はIOIのスポンサーであるインベスコ・グループが上場廃止に向けて全投資口数を対象にしたTOB行うと発表されました。
物事を簡略化して考えると、結局はスターウッドとインベスコ双方とも、IOIを上場廃止して保有資産を自らの自由に出来ることが目的だとも考えられます。

IOIの理論的資産価値を単純計算すると。
直近期末評価額(不動産鑑定価格)   274,320百万円(a)
発行済投資口数            8,802,650口(b)
1口当たりの不動産価値(c=a÷b)  31,220円/口(c)
※1口当たりの純資産価値(12,814円/口)とは異なります。

即ち、cが保有資産の計算上の保有資産価値になります。
勿論計算式としてはIOIの借入金総額を保有資産価値から控除するという純資産価値に近い価格もありますが、上場廃止後も私募として運用するならば借入金は借り換えるだけですから、財務構造は変わらないはずです。
新たなTOBの買付価格は22,750円/口(d)なので、c-d=8,470円/口がIOI上場廃止して全投資口を取得した場合の含み益になります。
総額は約746億円になりますから、これがTOBの目的だと考えられます。
勿論これは皮算用ですから、現実化するとは限りませんが、スターウッドもインベスコもこれが欲しくてTOBを行ったのではないかと推測されます。

更に深読みすると、元々スターウッドによるTOBは、プロレスと同じで最初から筋書きのある戦いだったとも考えられます。スターウッドがヒール役を演じ、インベスコがベビーフェイス(善玉)という役割ではなかったのかとも邪推してしまいます。所謂茶番劇だとも考えられなくもありません。
仮に資産運用会社が真に投資家利益を重視するから、cに近い価格での買取を行っても良いはずですが、これでは利益がありませんから、スターウッドのTOB価格によって一つの基準を作ってから、それに若干上乗せすることでTOBを成立させようと目論んでいるとも言えます。
私は、IOIへのTOBには最初から胡散臭さを感じていましたから、一切関与しないと明言していました。 彼らも彼らなりに考えての展開だったと思いますが、そこには既存投資家への責任とREIT市場への健全性に寄与するという気持ちは感じられません。
では今後はどうなるのかですが、 仮に今回のTOBも不成立になれば、IOIは完全に迷走状態に入りますので、最悪はどこかの投資法人に吸収合併されてしまう可能性があります。
従って既存投資家は、今回のTOBに応じて22,750円/口で売却してしまうか、それとも癪に障るので応募せずに最終的に何処かの投資法人へ吸収合併される道を選択するかの何れかになると思います。


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