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2020. 2.14.Up Dated.
宿泊施設セクターの対策

 利益超過分配金は主として物流倉庫銘柄が実施しています。費用項目としては建物減価償却費を原資としていますが、実際は手持ち現預金からの支出になります。
利益超過分配金は表面上の分配金額を押し上げる為に使われていますが、これは資本の払戻しに該当し、所謂タコ足配当になります。
従ってREITにとって望ましい手法ではありませんが、今回の新型コロナウィルスの感染者増加によって収益低下を余儀なくされる宿泊施設や商業施設を保有している銘柄にとって、緊急避難措置として利益超過分配金の実施も検討する必要がありそうです。
勿論第一義的には内部留保の活用になりますが、内部留保を持たない銘柄も多いですから、 これらは利益超過分配金しか方法がありません。
但し、前提としてどの程度の収益減なのか、そして分配金減少幅にもよります。
小幅であれば何もせずにストレートに分配金を減少させれば良いのですが、海外からの観光客だけでなく、国内消費も落ち込む可能性がありますから、この場合は大幅な分配金低下になります。
宿泊施設では賃貸収支が赤字になってしまう物件も出るかもしれません。その場合分配金原資は更に減少しますから、最悪では従来の分配金の半分程度になってしまう可能性もあります。
今後の見通しを決定的に左右するのは、オリンピック開催の可否になります。予定通り開催されれば一時的な落ち込みで済みますので、特に対応せずに2019年上半期だけの収益減少を受け入れるという方法もあります。
逆にオリンピック開催が中止又は延期になれば、日本にとっても非常事態になりますから、REITも非常事態という見方を取る必要が出ます。この時は前述の利益超過分配金によって分配金の大幅な落ち込みを緩和する方法も必要になります。所謂激変緩和措置を採ることも検討しなくてはなりません。

一方で宿泊施設の運用戦略も見直す必要があり、安易にパック売りして稼働率を稼ぐ方法に浸っていた点も反省する必要があります。
特定の国の観光客の依存度を下げて分散するのはREITの運用の基本ですから、緊急避難措置を採る際は、根本的な問題の解決を図る努力も求められます。
従来からこれを意識して運用していた宿泊施設銘柄もありますが、それでも今回の影響は大きくなりそうですから、これからは正念場になると覚悟した方が良さそうです。
長期化すれば、事は宿泊施設だけでなく商業施設もダメージを受けますし、景気が悪化すれば全ての用途に影響が生じますから、他人事だと考えるのではなく有事の備えを行う必要もありますので、今のコロナウィルス問題の行く末を細心の注意を払って見ておく見識が必要です。
勿論事が短期に収まればそれに越したことはありませんが、そのようなベストシナリオは考える必要はありません。 今資産運用会社に求められるのは、投資家の為にどれだけの準備と努力を行うかです。


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