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2019.10. 4.Up Dated.
REITの運用パフォーマンス

 東証REIT指数が2,100ポイント台後半まで上昇していますから、REITの平均利回り(次期予想分配金ベース)が4.0%を切る状態まで下がっています。
この相場上昇の背景には米国金利の低下の影響がありますが、冷静に見ると今のREIT相場の上昇は外的要因によって引き起こされていると言えます。
本来は外的要因だけでなく、REIT自体のパフォーマンスもチェックする必要がありますので、改めてREITのパフォーマンスを見てみます。

① 営業外費用について
分配金を大きく変動させる要素としてはデットの調達費用(借入金利と融資手数料) の増減がありますが、現在のマイナス金利下ではどの投資法人も過去最少の営業外費用になっています。
更に投資法人に対する金融機関の与信度によって調達利率に格差が付いています が、今はこの格差も縮小しています。

② 保有物件の収益力について
保有物件の大半が定期借家契約になっている物流倉庫を除いて賃貸動向を見ると、

「稼働率」
オフィスビルの平均稼働率は既に99%超になっていますから、ほぼ満室状態でこれ以上の上昇は期待出来なくなっています。
賃貸住宅の平均稼働率は97%超で、数字的には上昇の余地はありますが、賃貸住宅の稼働率が100%を維持されるにはサブリースが掛かっているケースであり、通常は 95%程度が巡航状態ですから、賃貸住宅の稼働率も上限に達していると言えます。
商業施設は100%が通常の状態で、空室が出るようになれば、明らかに不振状態ですが、 現在は100%稼働の物件が大半なので、商業施設も伸びる余地はありません。

「賃料」
オフィスビル賃料は昨年初頭から明確に上昇基調になっていて、今年も上昇傾向が続い ていますが、その勢いはやや失速していますから、そろそろ上限に達すると考えられま す。
賃貸住宅の賃料水準は過去から一貫して小幅な変動になっているので、今の上昇基調も小幅な範囲に収まっていますから、賃料上昇によるパフォーマンスの向上は余り期待で きません。
商業施設は売上連動賃料の増加によって賃料水準が上昇していますが、後述の消費税増税の影響がありますので、今後は下降が予想されます。

「消費税増税について」
10月1日からの消費税増税は、先ず商業施設に影響を与えますが、どの用途の賃貸費用も上昇しますから、遅れて全ての用途の利益の下押し圧力になります。

「宿泊施設」
宿泊施設の稼働率は過去最高水準まで上昇していますので、今後は稼働率ではなく、客単価の上昇を図る必要がありますが、当面の国内需要は消費税増税の影響を受けそう です。
インバウンド需要は依然として伸びは期待出来ますが、こちらは為替の影響が大き く、円高は需要を冷やします。

このように見ると、REITのパフォーマンスは今が上限だと見ることが出来ます。
マイナス金利は暫く続くので、営業外費用の増加は織り込まなくて良さそうですが、物件自体のパフォーマンスは下押し圧力を考慮しなくはなりません。
こうなると既に上限に達しているREITパフォーマンスを前提にして相場を上昇させると、その反動が大きくなります。外的要因だけで相場を上昇させていると、何れは煮え湯を飲むことになりかねませんから、要注意の状況だと言えます。


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