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2019. 8.23.Up Dated.
日銀のREIT買入状況

 日銀が定期的にETFとREITを市場から買い付けていますが、最近はREITの買入がトーンダウンしています。



このグラフは2019年の東証REIT指数の日次推移と日銀の買入状況を表しています。
日銀の1回の買入は12億円になっていますので、1日のREIT市場の売買高は約1,000億円程度で、日銀の買入は全体取引の1%強にしかなりません。
それでも日銀の買入対象となるAA格銘柄の投資口価格はこれによって堅調に推移していると言えます。
所が、グラフを見ると分かるように、今年4月までは比較的活発に買入を行っていましたが、6月は3日に実施しただけで、7月は0回、そして8月も6日に実施しただけに留まっています。
元々日銀の買入は市場を下支えする目的で実施しましたので、REIT市場が復調を始めた2014年以降は実施する必然性は小さかったのですが、黒田日銀総裁になってアベノミクスに協調する形で活発化させました。
日銀の買入額は市場全体の取引高から見れば微々たるものですが、私は以前から、金融当局が市場に介入する合理性が薄いのに買入を続けるのは問題があると指摘していました。
日銀は6月からの買入頻度が極端に落ちていますが、恐らくREIT相場の上昇を見込んでの対応ではないかと推測されます。
仮に現在の2,000ポイント超の相場でも、買入を実施すれば、この相場を維持したいとのサインだとも見られますし、相場が下がった時には買い支えも求められます。
従って今は大人しくしておこうとの対応かもしれませんが、日銀にとっての目先の課題は山積みです。
世界的に利下げと金融緩和状態が進行していて、円高になっていますし、10月からの消費税増税による景気の腰折れも予想されていますから、こちらの対策が最優先課題です。
既にマイナス金利になっているのを深堀りする可能性もありますが、金利を下げても景気を刺激する効果は小さいようですから、金融政策は手詰まりの感もあります。
株式市場は米中貿易摩擦の進行と円高によって低迷していますから、正直言ってREITに関わっていられる状況ではないと言えます。
今のREITの状態から見れば、日銀の買入は余計なお節介ですから、これを機にREITの買入は停止してはどうかと思います。


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