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2019. 8. 9.Up Dated.
景気の不確実性と企業戦略

 米国が中国を為替操作国と認定したことで、株式市場が委縮を始めています。
既に米国は9月に中国からの全輸入品に関税を課すと発表しましたが、これに追い打ちをかけるように為替操作を行っていると認定し、更に関税率を上昇させる方向を示しました。
現在の対中関税は25%が上限ですが、為替操作国と認定すれば関税率45%まで引き上げることが出来るようになるとのことです。
9月に米国市場に輸出する中国製品の全品目に関税が掛けられるようになると、スマホ等の身近な商品にまで影響が及びますから、米国内の物価も上昇すると考えられます。
従って、今秋以降の米国景気は失速するとの観測からNY株式も下げましたので、日本株式市場はこの余波も受けつつ、日経平均は21,000円を割り込んでいますが、これは中国からの対米輸出品の価格競争力低下による売り上げ減少が織り込まれる為です。
日本企業も中国で生産して米国へ輸出している製品も多くなっているのと、中国に生産拠点を持っているメーカーから部品や機械などの発注が減ることで、売り上げが減少すると見込まれる為です。
但し、これらの予測は中短期の見方ですので、長期的にはどのような方へ向かうのかを考えなくてはなりません。
米国の本音は中国を世界経済のサプライチェーンから外すことだと考えられますから、中国へ進出している外資は生産拠点を他国へ移転しなくてはなりません。
既にベトナムへ移転している企業も多いようですが、今後はインドへの移転も増えていくと予想されるのと、米中関係は待っていても改善されないと判断して企業の戦略を転換する必要がありそうです。
企業という組織は現状の変更が苦手ですから、トップダウンで進められる企業は動けてもボトムアップ型の大企業は体が頭に付いていけません。
この結果、日本の企業にも淘汰の波が訪れ、最終的に戦略的に考え動ける企業が残ります。
現段階で先手で動いている企業は少数派ですが、何れ多くの企業の戦略転換が求められても、これを投資家に明確に示せる企業は少ないようです。
淘汰の時代には厳しさもありますが、生き残れた企業の富は増加しますので、マイナス面ばかりではありません。
従って、株式市場は今後どの業種がサバイバルするのか、そしてどの企業が生き残れるのかを見通しながら動かなくてはなりませんが、それには今の投資情報や見方では不十分ですから、もっと高度化しなくては投資家判断情報として使えないようになると思います。


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