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2019. 7. 5.Up Dated.
さくら総合リート投資法人の動き

 スターアジアグループから敵対的買収を受けているさくら総合リート投資法人が、対抗策として、投資法人みらいとの合併を検討していることが分かりました。
所謂さくら総合リート側のホワイトナイトとして投資法人みらいが新たに登場したことになりますが、何故投資法人みらいなのかという疑問もあります。
スターアジア不動産投資法人の投資家評価を見做し額面価格比で見ると119.5%、一方の投資法人みらいは107.2%ですから、この基準ではスターアジアの方が投資家評価は高いという事になります。
買収対抗策としては、スターアジアより投資家評価の高い投資法人が有効なはずですから、もっと上のランクの投資法人との提携を進めたかったとも言えます。
尤も短期間でホワイトナイトを探すのは難しかったと思いますので、恐らくさくら総合リートのスポンサーであるガリレオグループ(豪州のファンド)と何らかのコネクションがあったイデラ・キャピタル(投資法人みらいのスポンサーで中国系のファンド)に話を持っていったのではと推測されます。
両方とも外資系ですし、中国系ファンドは豪州にも活発に進出していますから、元々両社に接点があったのではと考えられなくはありません。
投資法人みらいのスポンサーには三井物産アセットマネジメント(日本ロジスティクスファンド投資法人のスポンサー)も参加していますから、三井物産のブランドも武器になると考えたのかもしれません。

これでさくら総合リートをめぐってスターアジアと投資法人みらいとの綱引きが始まる訳ですが、具体的には8月末に開催予定の投資主総会で投資家に選択してもらうことになります。
このようなケースで最も重視すべきは投資家の利益ですから、法の盲点を突く見做し賛成制度が適用されなくなるのは良いことだと言えます。(この点については未だ明確ではありません)
次に、どちらが投資家利益に叶うかは、投資家自身が判断しなくてはなりませんが、私から見れば、どちらも同じレベルですから泥試合の印象です。
少し飛躍しますが、やはりREIT投資では銘柄選別能力が肝なので、さくら総合リートの投資口を保有した時点で、このようなリスクを抱えたと言えます。
さくら総合リートの投資主の過半は個人投資家ですが、この個人投資家は、投資口を購入した時点でこのようなケースが起こると想定した人は極めて少数だと思います。
証券会社に勧められたから、利回りが高いから、という理由で購入した個人投資家が多いと思われますから、今回のようなケースでは判断に迷うのではないかと考えられます。
それは機関投資家も同じだと考えられ、敢えて言えばC級の投資法人の何れかを選べという事になりますから、どちらを選んでも投資家の利益は上昇しない可能性がありますので、判断保留という態度になるかもしれません。

今回のケースを別の角度からみると、さくら総合リートのような弱小の投資法人は、単独ではREIT市場では生き残りが難しいとも言えますから、他の新興の投資法人にとっても他人事ではありません。
これと同じような状況はリーマンショックの時もあり、敵対的買収こそなかったものの、当時の上位の投資法人は証券会社が粗製乱造した弱小の投資法人を救済する気はないと冷たく言い放っていました。
恐らくこの時の感覚は今も変わっていないのだろうと思います。


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