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2019. 5.17.Up Dated.
スターアジアによる合併提案について

  スターアジア不動産投資法人のスポンサーであるスターアジアグループが、スターアジア不動産投資法人とさくら総合リート投資法人に合併提案をしました。
以前であれば合併交渉は水面下で行われ、実現したものだけが発表されましたので、今回のように合併提案から発表されるのは初めてのケースです。
REITの仕組みから見れば、広く公表して投資家の判断を仰ぐというこの手法は合理的ですから、今回のスターアジアの合併提案は評価すべきものと思います。
一方、手法は合理的であっても、合併の可否については別途検討が必要になります。

1. 資産規模について
合併の目的の一つに資産規模の拡大があります。 通常の外部成長が鈍行列車だとすれば、合併による外部成長は急行列車のようなスピードになりますから、外部成長の面では合併は有利になります。
仮に今回の合併が実現すれば、スターアジア不動産投資法人の資産規模1,043億円(取得価格ベース)にさくら総合リート投資法人の561億円(同)が加わり、資産規模は一挙に50%以上増加します。
REITにとって資産規模の拡大は保有物件の分散度が高まり、収益安定性に寄与すると期待できますから、規模という面だけで見れば合併はウェルカムです。

2. 投資用途について
スターアジア不動産投資法人もさくら総合リート投資法人も同じ総合型投資法人なので、合併しても投資方針には変更はありませんから、従来の延長線上で見ておけば良いという事になりますので、投資家にとっては分かり易さがあります。
一方、総合型投資法人の保有資産の質は概して劣っていて、スターアジア不動産投資法人もさくら総合リート投資法人の保有資産もREITの保有資産の中では劣後していると言えます。
従って両社が合併しても保有資産の質の向上はなく、規模だけが拡大すると考えるべきです。

3. ポートフォリオNOI利回りについて
直近4期の平均ポートフォリオNOI利回りをみると、
スターアジア不動産投資法人: 4.86%/年
さくら総合リート投資法人:   5.54%/年
となるので、スターアジア不動産投資法人にとって合併によるポートフォリオNOI利回りの上昇が期待出 来ますから、これが合併提案を行った主目的だと考えられます。
一方、さくら総合リート投資法人にとっては、保有資産の質は一旦置いたとしても、吸収合併によってNOI利回りは低下しますから、メリットが少ないと言えます。

4. 見做し額面(両社とも100,000円/口)比率について
5/16の終値ベースでみると、
スターアジア不動産投資法人: 111.3%
さくら総合リート投資法人:   91.4%
となり、市場評価はスターアジア不動産投資法人が上ですから、合併後の存続投資法人になると考えら れます。
但し、この比率を見ると両社とも低い市場評価だと言えますので、弱者同士の合併と言えなくはありません。

以上が概略となりますが、更に深く突っ込んだ内容については、REITトレンドニュースと6月に開催予定の投資家セミナーでより詳細の解説を予定しています。


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