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2019. 4. 5.Up Dated.
REITと米国10年債利回り

 東証REIT指数の動きを見ていると、一時的には1,900ポイントを超えたものの、直ぐに戻って、直近では1,880ポイント前後で動いています。
元々REITの利回りは米国10年債利回りに準拠して形成されていましたから、米国の長期金利が低下傾向に入り、米国FRBも年内の利上げを行わない方向であれば、REITの利回りとのスプレッドが拡大しますから、考え方としてはREITの利回りも下がり、結果として投資口価格上昇するという見方が成り立ちます。
証券会社はこの見方に立って盛んに相場を上昇させようと動いているようですが、国内投資家が逆張りをすることでREIT相場の鎮静化を図っているのがREIT市場の実態のようです。
REITの利回りが米国債利回りに準拠しているとしても、毎日の米国債利回りの動きを反映しているのではなく、長期の水準見通しをベースにして形成されていますから、短期的な動きだけでREIT相場を計るのは早計です。
米国10年債利回りは、昨年は3.2%程度まで上昇しましたが、今年に入ってからは年初が2.66%で直近は2.51%まで緩やかに低下しています。従って3.5%も視野に入った2018年と比べれば、今年は1.0%も低下していますから、多少なりともREIT相場の上昇の根拠にはなっていると言えます。
但し、年内の金利動向を見通すのは難しく、国際政治情勢によって大きく動く可能性もあるので経済分野だけでは予測が立ちません。
国際政治情勢を冷静に見れば、米中貿易摩擦によって中国経済は低下しつつあり、欧州も英国のEU離脱が混迷している上に、EU内の不協和和音もあって、強さはありません。
こうなると投資マネーは損失回避の為に米国へ流れるのは当然ですが、マイナス金利になっている日本にも流れ込みます。(マイナス金利でも安定していれば、損失は回避出来る)
このような動きは経済の実態とは必ずしも一致しませんが、投資マネーはマネーゲームをしている訳ですから、仕方ないとも言えます。

次に、REIT市場では証券会社を除いた国内投資家がREIT相場の鎮静化の方向に動いているのは何故かという疑問が湧きますが、まともな投資家であれば、長期保有の利回り商品であるREITは安定した相場が望ましいと考えるのは当然です。
証券会社の誘導で相場上昇局面に乗って買いに走れば、何れは損失を抱えてしまうのは確実ですから、それを避けたいと思うのは健全な投資態様です。
一方、REIT市場での外国法人の取引シェアは50%以下で推移していますから、株式市場に比べれば影響度か小さくなっているのと、REIT市場での外国法人は相場を左右するような取引は避けています。
それは銘柄を選別する情報が少なく、意図的な取引が難しいので、相場の流れの中で取引を繰り返すという穏やかな投資態様になっている事も相場動向に関係していると思います。
元々国際間を動く投資マネーは、他の投資家の利益には関心はなく、市場の発展にも興味はなく、自己の利益の最大化とリスクの最小化のみを追求していますから、このような投資マネーが大量に流れ込むのは避けたい所です。
こう考えると、米国の金利は取り敢えず現在の水準で安定して、グローバル投資マネーを惹きつけて欲しいと思います。
そしてREITは単にグローバル投資マネーが流れ込んでいるだけで、金利が低下傾向になる米国債利回りを一時的なものと考え、長期保有の利回り商品の性格を意識して健全な相場を維持するという意識が、REIT投資のメリットを将来に亙って保証していると考えておく必要がありそうです。

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