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2019. 2.15.Up Dated.
新規上場の動き

 エスコンジャパンリート投資法人が13日に上場しました。初値は97,200円、初日終値は98,500円で、IPO価格の101,000円を下回りましたが、翌14日終値は101,100円になりました。
出来高は初日が10,304口、2日目は4,557口なので、初日の取引は市場の実勢ですが、翌日は主幹事証券会社が買い支えた結果ではないかと考えられます。
エスコンジャパンリートの上場後の投資口価格がIPO価格を下回ることは十分に予想されていましたので、IPOで購入した投資家は想定内だろうと思います。
一方、証券会社の勧誘に乗ってIPOで購入した投資家の中には、キャピタルゲインを期待した人も居るかも知れませんが、正直言ってそういう人はREIT投資には向いていません。
REIT投資を始める人は、ある程度の知識と判断力が必要になりますから、REITに関する投資判断情報を集められない人は傍観するのが賢明です。

次の新規上場は、サイケイリアルエステート投資法人です。未だ情報が少ないので予想が難しいですが、最近の機関投資家は目が肥えてきましたので、サンケイリアルエステートのIPOも油断は出来ません。
この投資法人は、オフィスビルが主体になっています。保有物件の筆頭に大手町サンケイビルを挙げていますが、僅か2%の共有持分の取得予定で、上場時保有資産の構成比率でも全体の5.8%に過ぎません。
従って、本来の旗艦物件は大阪梅田所在のブリーゼタワー(共有持分30%取得予定)で、構成比19.8%になります。ブリーゼタワーは御堂筋沿いではなく、2ブロック先と梅田地区の立地の中では劣りますので、これを旗艦物件とするのは憚れたのだろうと思います。

次に、気になるのは取得価格比でのNOI利回りです。
大手町サンケイビルは鑑定利回りで2.8%と発表されましたが、REITが3.0%未満の利回りで物件を取得するのは稀です。 不動産価格が高値圏にある時は高値買いにならないような物件取得をしなくてはなりませんから、3.0%以下の利回りで買ってしまうと、長期ではお荷物物件になってしまうからです。
サンケイリアルエステートもそれが分かっているから、2%しか取得しなかったのであろうと推測されますが、全体として取得目線が緩んでいる感があります。
ポートフォリオNOI利回りは鑑定利回りで4.1%と公表されていますが、日本ビルファンド投資法人の直近4期の平均NOI利回りが4.31%、同じくジャパンリアルエステイト投資法人が4.39%ですから、サンケイリアルエステートが資産規模434億円で4.1%というのは、何を基準にして組成したのか分かりません。
推測では、スポンサーのサンケイビルに最早余裕がなく、少しでも高値でREITに売却しなくてはならない台所事情があったものと思われます。
サンケイリアルエステートは上場前に、何度か私のセミナーにも参加していますから、上場戦略や上場時のポイントについてある程度は理解しているはずです。 その知識が役立っていないのは、スポンサーの意向が重視された為だと考えられます。何事にも言えることですが、知識と知恵は別物という事なのでしょう。

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