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2018.12.28.Up Dated.
相続不動産の処分について

 今回は、全国で拡大している空家問題について考えてみます。
所有者不明又は空家状態で放置されている土地の面積が北海道と同じ面積に達しているとの事ですが、今回親戚の相続不動産に関わって、その手続きの複雑さが分かりました。
先ず最初に相続人の確定が必要ですが、子供が親と同居しているようなシンプルなケースでは、比較的簡単に判明するケースも多いですが、それでも戸籍を溯って法定相続権のある人を確定しなくはなりません。
高齢の人が亡くなった場合は、戸籍は原戸籍から調べなくてはなりませんが、この戸籍は手書きになっている為に、判読が難しいです。
従って、専門の司法書士に依頼しなくては相続関係を調べることが難しいのが現実です。
今回は全ての手続きを私が行ったので、相続から不動産の処分までの流れが分かりましたが、原戸籍から改正後の戸籍を本籍地から取り寄せて系図を作り、相続人それぞれの現住所を追跡しました。
但し、これらに必要な戸籍等の取得は簡単ではなく、誰でも取得できる訳ではありません。必要な戸籍の取得の為に、被相続人(死亡した人)との関係を示す戸籍の提出が求められますから、先ず最初の段階でつまずく人が多いと思います。
これも弁護士や司法書士等に頼む方法はありますが、それなりの費用負担が生じます。
次に、相続人間の協議に入りますが、相続人が日頃から交流があれば話を始める事は出来ますが、音信の無い親戚が加わるようになると、協議に入るまでが大変です。
これも弁護士に依頼することは出来ますが、親戚間の利害調整は一筋縄では行きませんから、弁護士でも協議を整えるのは大変です。
そして恐らくここまでの作業を専門家に依頼すれば100万円単位の費用が掛かりますから、誰が負担するのかという問題が出てきます。
不動産を相続しただけでは何の収入もなく、公租公課等の負担だけが生じます。相続不動産を売却しなくては費用の捻出が出来ませんから、相続協議は売却の可能性と一緒に進めなくてはなりません。
不動産の売却となると不動産業者へ依頼しなくては実現が難しいですが、この不動産業者の選定を誤ると上手く行きません。またその不動産が売却可能で、且つある程度の売却代金が見込めないと不動産業者は引き受けませんから、東京23区内の不動産のようにかなり限定されるのではないかと思います。
元々不動産の売却は素人では無理ですが、不動産業者であれば誰でも出来るものでもありません。
今回は媒介業者だけは依頼しましたが、複雑な手続きは全て当方で行いましたので、煩雑さは軽減されませんでした。
特に相続不動産の売却に伴う譲渡税の軽減措置は、制度はあってもこれを適用されるように進めるのは、やはり素人にはハードルが高過ぎます。
勿論これも税理士に頼む方法もありますが、それなりの費用負担が生じますから、複数相続人のある状態では相続不動産の売却代金が1,000万単位にならないと無理かも知れません。
今回は私の姻戚関係だったので何とか整理しましたが、仮に自分の親戚であったらしなかったかもと思う程面倒でした。(義理が絡んだので進める気持ちになりました)
それだけ面倒で嫌な事もいくつもありますので、正直言って報酬を当てにしては出来ない作業です。
更に役所関係の手続きは複雑すぎて面倒の一言に尽きますから、これだけで止めてしまう人が多いと思います。
私ももう二度と役所関係の手続きはしたくないと思いましたので、所有者不明や空家問題がこれからも拡大していくのは避けられません。
せめて役所関係の手続きぐらいは簡略化して欲しいと思いますが、実際は窓口で当惑したり怒ったりするのが当たり前という覚悟が必要です。
私も何度も無茶な役所の要求に遭遇しましたが、元々相続問題だけで疲弊していますから、根気があるか、かなりのインセンティブがないと誰も手を出さないのが現実だと思います。

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