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2018. 9. 7.Up Dated.
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人の上場

 伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人(ALI)が本日上場しましたが、初値は99,300円/口とIPO価格約3.6%下回る状況です。
REITで物流倉庫銘柄は8銘柄になり、用途別では最多の銘柄数になっていますから、市場としてもやや食傷気味だと言えます。
また物流倉庫の不動産鑑定価格は高くなり過ぎていて、築浅の物件は収益利回りが5.0%を切っていますから、鑑定価格ベースで物件取得を行うと、ポートフォリオNOI利回りは5.0%/年を確保するのが精一杯だと言えます。
何しろ原野に近い場所に立地していて、他の用途には転用出来ない用途地域が多いですから、このような不動産を不動産鑑定士から収益利回り5.0%以下と言われても俄かに納得出来るはずもありません。
また低い収益利回りで物件を取得してしまうと、投資家へ出せる分配金は10,000円/口以下(投資口50万円換算)になってしまいます。
REITの平均分配金は15,000円/口程度になっていますから、これを大幅に下回るパフォーマンスでは市場評価が良いはずもありませんが、ラサール・ロジポート投資法人以降に上場した物流倉庫5銘柄は何処も低いパフォーマンスで上場してきました。
何故こうなるのかと言うと、投資法人(資産運用会社)の立場ではなるべくIPOを順調に通過し上場後も比較的高い評価を得て、資産運用を進めたいと考えますが、スポンサーはより多くの売却益を得たいが為に、高くなっている鑑定価格を利用して高値売却を図ります。
資産運用会社の人員はスポンサーからの出向ですから、スポンサーの意向には逆らえず、結果として上場後に苦労することになります。
またインカムゲイン投資商品であるREITに不動産鑑定価格で妥当性を説明する事自体矛盾がありますが、スポンサーはそのようなことは理解出来ない企業が多く、同じ失敗を繰り返します。
上場を承認する東証も、REITの平均分配金が15,000円/口なのに、1万円も出せないような投資法人の上場に注文を付ける事もなく、スルーしています。
株式と違って投資家は価格の上下でキャピタルゲインを狙うのではなく、分配金によってインカムゲインを狙うのですから、分配金額は重要な項目ですから、本来はどの程度のパフォーマンスが出せるのかは重要な審査項目になるはずです。
ALIの場合も真水分配金ベースでは1万円以下の分配金になっていますから、仮に東証がそれを指摘すれば、スポンサーは売却価格で調整せざるを得ません。
スポンサーが鑑定価格を根拠にして高値売却を企図しても、上場承認が得られないとなれば、譲歩せざるを得ず、結果として投資法人(資産運用会社)にメリットが増え、最終的には投資家利益に繋がります。
普通に考えれば、これが上場審査だと思いますが、東証は違う考え方を持っているようです。


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