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2017.11.17.Up Dated.
ケネディクス・レジデンシャル投資法人とジャパン・シニアリビング投資法人の合併

 11月10日にケネディクス・レジデンシャル投資法人とジャパン・シニアリビング投資法人の合併が発表されました(合併は両者の投資主総会での承認が必要ですから、現段階では予定になります)ので、今回は合併に至った背景等について解説します。

1. ジャパン・シニアリビング投資法人(JSI)の現状と課題
JSIは(吸収合併されて消滅する予定の投資法人)は、ヘルスケア施設を投資対象として2015年7月に上場しましたが、IPOは見做し額面価格200千円/口に対して▲5%のディスカウントの190千円/口となり、その後の市場価格もIPO価格を常に下回った状態で推移していました。
従って、IPOで購入した投資家はキャピタルゲインを得られる機会がないまま今日に至っていましたので、IPO投資は失敗と言えるパターンでした。
一方、分配金は過去4回の実績で合計分配金は13,263円ですから、IPO価格比では6.98%の分配率(換算すると約3%/年の分配率)になりますが、こちらも芳しくなく、また投資元本の減少分を補うことは出来ませんから、投資家にとっては頭の痛い銘柄の一つになります。
このようにJSIは、投資家の期待には応えられていない訳ですから、現状を打開しなくてはなりませんが、自力では殆ど不可能という状態に陥っています。

2. ジャパン・シニアリビング投資法人の投資家の視点
前述のように、投資家はトータルで損失を蒙っていますが、投資口を売り捌いた証券会社は「全て投資家の自己責任」という立場ですから、特に大量の売り捌きの対象となった個人投資家は面白くはなさそうです。
今回の合併でも証券会社は手数料を得ますが、せめてIPO時の手数料分程度はディスカウントして欲しいとも言えます。(現実はあり得ません))

3. ケネディクス・レジデンシャル投資法人(KDR)について
存続投資法人となるのがKDRですが、ここはケネディクス系投資法人としては最も市場評価の高い投資法人で、投資用途もレジデンス専門になっている事もあって、安定した分配金実績を持っています。(但し、合併後は総合型に転換予定)
合併先として、ケネディクス系の3つの投資法人の中で投資用途の親和性があるKDRが選ばれた訳ですが、これはJSIの投資家にとっては救いです。

4. 私の見方
上場後にJSIの資産運用会社へヒアリングを行った際に、同席したケネディクス出身の幹部の方に、この投資法人はケネディクスで面倒を見る必要があると申し上げ、最終的にはケネディクス系投資法人との合併を検討してはどうかと提言したことがあります。この提言が生きたのかは定かではありませんが、ケネディクスが吸収合併を決めたことは評価に値します。
JSIの投資家にとっては面白くない面もありますが、合併を決断したケネディクスはJSIの共同スポンサーとしての責任を果たしているとも言えます。
またJSIの投資家は割り当てられる新投資法人の投資口の価格が上昇すれば、かつてのキャピタルロスも減殺されますので、これに期待することになりますが、合併比率から見ると、ポートフォリオ利回りも多少は上昇しそうですから、期待は出来ると思います。
但し、KDRの市場評価が現状から大きく上昇するとは思えませんから、過大な期待は禁物ですが、少なくともこの合併はJSIにとって、有効且つ唯一の打開策だと言えなくはありません。


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