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2017. 9.22.Up Dated.
地政学リスクについて

 北朝鮮問題は長引くと予想していましたが、益々その様相を呈しています。安倍政権も同様な見方のようで、10月に衆議院の解散総選挙に踏み切ることで、議会の安定多数を得て、北朝鮮問題に対処する腹積もりだと思われます。トランプ氏と金正恩氏は激しい言葉の応酬になっていますが、これは両者とも宣伝効果を狙っての行動なので、鵜呑みには出来ません。
分かっている事は、国連制裁決議によって北朝鮮の経済力が低下し、国内の不満が徐々に高まることです。但し、独裁政権ですから、国内の不満によって何かが変わるというのは楽観的な見方に過ぎないとも言えます。それでも、相対的に小さい経済規模の北朝鮮は、制裁決議の影響に因って疲弊していくことは確実ですから、持久戦は圧倒的に北朝鮮が不利になります。

従って、問題は経済の疲弊によって北朝鮮はどんな選択肢があるのかという点になります。
米国が譲るのは、米国の安全保障と東アジアの安全保障が確保された時になるでしょうから、北朝鮮がそこまで譲歩する可能性は小さいので、その過程で何が起こるのかになります。
周囲を大国に囲まれた北朝鮮には、打って出るという選択は難しいですから、自国の体制を維持できる範囲内での戦闘によって国内を纏めるというのが現実的な政策のように思えます。
そうなると、朝鮮戦争の南北休戦ラインを超えての戦闘しか考えられませんので、取り敢えず南に攻め込んでみるという事態が想定されます。
米韓の安保条約があるので、大規模な攻撃はしないで限定的な戦闘になる可能性がありますし、この程度では米国が最大の報復行動は採らないと踏んでの地域限定戦を展開し、最終的には休戦によって、北朝鮮の地位を確保するというのが一つのシナリオになります。

仮にこのような有事になれば、日本の立場は微妙になります。
南北朝鮮の争いに参加することはあり得ませんが、在韓米軍の支援は求められますから、具体的にどの範囲の協力をするかですが、日本の存立が脅かされているとは言えない状態で集団安保規定の適用は難しいので、後方支援に限定されると思われます。
日本国内では後方支援であっても北朝鮮のミサイルが飛来するリスクが高まるという論調も強くなると思われますが、北朝鮮の意図が限定戦であれば、その可能性はありません。
そうなると、日本は米国に働きかけて早期の停戦を促すことになりますので、日本の政治外交力が試されますから、総選挙後の内閣の布陣をそれに合わせなくてはなりません。

これは私の予想ですから、果たしてこのような展開になるのかは分かりませんが、最悪でもこのような有事の想定なので、日本国内への影響も限定的ではないかと思います。


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