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2016.11.18.Up Dated.
投資法人みらいの上場

 「投資法人みらい」というREITが12月16日上場予定と発表されました。
設立したスポンサーは中国資本の投資会社のイデラキャピタルマネジメントと三井物産になっていますが、実質はイデラキャピタルではないかと思われます。
海外資本のREITはスターアジア不動産投資法人、さくら総合リート投資法人と上場が続いていましたが、市場評価が芳しくないため、中国企業ではIPOも苦労すると考え、途中から三井物産を引き込んだものだと思われます。
従って穿った見方をすれば、投資家に三井物産系REITと思わせることで、IPOを成功させようとしているのだと思います。

この投資法人がREITとしてどういう市場評価を受けるのかは注目です。
不動産の側面から見ると、アジア系資本に上手く国内不動産を売り抜けたと思ったら、REITを使ってブーメランのように国内に戻ってきたしまったという事になります。
日本の不動産は外資系にはS乃至Aクラスの物件は売却されませんし、その他のクラスでも高値で買わない限りは取引相手として選択されない傾向があります。
従ってイデラキャピタルも日本の不動産業界にとってはこういう対象ですから、取得した不動産の質と価格面での不利は否めません。
この不動産がREITを使って、再び国内市場に戻ってきているのですから、REIT投資家がどういう判断するのかが注目になります。

次に、パートナーを組んだ三井物産については、日本ロジスティクスファンド投資法人の成功実績があるのをイデラキャピタルが利用していると思われます。
これはイデラ側にはメリットがありますが、三井物産にとってはどうなのでしょう。
折角日本ロジスティクスファンド投資法人で得た高い市場評価を、投資法人みらいで嵩上げ出来るとは思っていないでしょうから、単に利用されるだけなのでしょうか。
目論見書では三井物産は太陽光発電のファンドを組成しているようですから、これをREITに譲渡して売り抜ける算段もあるかもしれませんが、三井物産がこの程度の目論見で参加したとは考えられません。
三井物産は伝統的に政治寄りの企業ですから、今回も経営トップの政治的判断ではないかと推測されます。私の憶測では、実務レベルでは反対が多かったのをトップが政治的判断で押し切ったのではないかという見方をしています。
一方、イデラキャピタルにとっては、ブランド力のある企業であれば何処でも良かったと思いますが、不動産企業は、前述の不動産取引の実態が分かっていますから、普通は話に乗ってきません。そうなると選択肢が限られますが、イデラキャピタルがどういう経路で政治色の強い三井物産にたどり着いたのかは定かではありません。

このように投資法人みらいは、三井物産を引き込んだことで実像がぼけていますが、REITとしては単純に、アジア系資本が日本の不動産を買い、それをREITを使って日本の国内市場へ転売するスキームであると言えます。


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