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2016. 9.16.Up Dated.
不動産価格について
 
 最近の不動産価格の動向を見る為に、REITが保有している物件の不動産鑑定価格の推移(2013年比での直近上昇率)を調べてみました。

オフィスビル(都心部) 110%
商業施設(渋谷・原宿) 114%
物流倉庫(首都圏) 114%
宿泊施設(首都圏) 127%
賃貸住宅(都内) 111%

何れの用途でも、鑑定価格が上昇しているのは、長期金利の低下を反映してキャップレートが下がった為です。
不動産鑑定評価は収益還元法(物件から得られる収益を基に、長期での期待利益率を掛けて価格を算出する手法)によって算出されますから、長期金利の低下は期待利益率を下げるので、その結果、価格は上昇する仕組みになっています。
従って、長期金利の低下はどの用途にも反映されますから、計算上の不動産価格は上昇することになります。

次に、上の表を見ると、過去3年間で最も鑑定価格が上昇しているのはホテル等の宿泊施設です。
これは稼働率と宿泊単価の上昇により収益が上昇している為だと考えられます。
他にも、都心型商業施設の賃料水準は3年前に比べると上昇していますが、不動産鑑定評価上は保守的に捉えられているようです。
オフィスビル、物流倉庫、賃貸住宅の賃料は押しなべて横這いですから、この用途は長期金利の低下が原因で不動産鑑定価格が上昇していると考えられます。
収益還元法では10年単位での見通しですから、長期金利がマイナス金利になっても、マイナス金利で計算する訳ではなく、10年間の期待利益率を下げるだけに留まります。
このように不動産鑑定価格で不動産価格動向を見ると、直近は天井価格に達していると考えられます。(マイナス金利は一時的な状態なのと、これ以上マイナス金利幅が大きくなる可能性は小さいため)

そこで、問題となるのは現時点での投資用マンション等の不動産直接投資です。
現在は、不動産鑑定価格がピークに達していると考えられますので、この状態で鑑定価格と同等の価格で購入した場合、将来は価格が下がる可能性が大なのです。
尤も、保有を続けていれば評価損を余り気にする必要はありませんが、問題はローンを組んで投資している場合です。
金融機関は、購入価格ではなく鑑定価格でローン審査を行いますから、仮に鑑定価格が下がった場合、担保割れを起こします。
特に、融資掛け目(購入価格に対するローンの割合)が高いと、価格下落によって追加担保の要求や一部返済を求められ可能性が生じます。
元々個人による不動産直接投資は、主たる目的が相続税対策なので、多少の価格下落は問題としませんが、これが純粋投資だと話が違います。
不動産投資のローンは住宅ローンとは性質も違って、エクスキューズもなく完全なビジネス取引になりますから、情勢の変化はストレートに反映されます。
こういう事を予め考えて不動産投資を行っているのであれば構いませんが、リスクを読まずに業者と一部の不心得な評論家の言に乗ると怪我する可能性がありますからご注意ください。

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