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2016. 9. 2.Up Dated.
利益超過分配金について
 
 最近、利益超過分配金を支払う投資法人が増えてきました。
最初に利益超過分配金の支払いを行ったのは物流倉庫REITで、その理由は倉庫という用途では、概して建物修繕費用の支出が少なく、毎期に積み上がる建物減価償却費(手元現金になる)を留保する意味が少ないということで、その一部を分配金に回すという事でした。
この場合の利益超過分配金は資本の払い戻し(B/S上の出資金の払い戻し)に該当しますから、個人は税務申告を行う必要があります。(特定口座の場合は証券会社が代行)
このような利益超過分配金のケースでも、投資家はその意味を理解して、その手法の合理性と妥当性を吟味する必要があります。
この説明は専門的になるのでここでは省略しますが、少なくとも単に投資口価格を上昇させようとして行っていると思われる投資法人は要注意です。
企業等の一般事業体を例にとると、このような株主還元策を実施するのは稀ですし、手元現金が増えれば、借入金を減らすことで経営の安定性を図ります。
特に不動産を保有している企業では、自己資本の比率を高める方に熱心ですから、自己資本を減らすような資本の払い戻しは通常は行いません。
また利益超過分配金はキャッシュアウトになりますから、常に潤沢なキャッシュを留保していないと、何かあった時に資金ショートに陥りかねませんから、REITのようにキャッシュが信託預金等によって拘束されているケースでは、財務指標を細かくチェックした上で利益超過分配金の可否を決定しなくてはなりません。

この視点で見ると、利益超過分配金を実施している投資法人の中には、殆ど財務バランスを考慮せずに行っている投資法人も散見されます。
また利益超過分配金原資を、資本ではなく、一時差異等調整引当額(資本の払い戻しには該当しませんが、自己資本は減少します)で行うケースもありますが、これも同様に要注意です。
例えば、マリモ地方創生リート投資法人が、第1期決算で利益超過分配金を行うと発表しましたが、IPOも芳しくなかったことで、相対的に手元現金が少ない投資法人が、第1期決算からこのような手法を採るのは疑問です。
REITの長期資産運用を考えれば、このような手法を安易には採用出来ませんから、恐らく証券会社が投資口価格対策として薦めたのではないかと推測されます。
目先の分配金を増やせば、投資家は反応するだろうとの思惑が透けて見えますが、最近のREIT市場を見ていると、投資家は証券会社程単純な思考構造を持っていないようですから、必ずしも思惑通りには行かないようです。


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