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2016. 8. 5.Up Dated.
資産運用会社の役割
 
 現在REIT市場に上場する投資法人は56銘柄になり、うち2012年以降に上場した新興銘柄は25銘柄になります。
ここで改めてREITの仕組みを解説すると、投資法人は投資家の資金を集める器であり、その資金を使って実際に運用を行うのは投資法人から資産運用業務を委託された資産運用会社になります。
従って、投資家の資金を投資に回して運用益を出すのは、不動産投資の専門家としての資産運用会社なのですが、これだけ銘柄数が増えると何処まで専門性が具備されているのか疑問です。
REITとしての運用期間が長くなれば、それだけ経験が蓄積されますが、新興銘柄では経験が短いので、その分努力が必要だと思います。
然しながら、概して新興銘柄は専門性向上の努力を怠っているとも思えます。
通常の運用業務は1~2年でこなせるようにはなると思いますが、資産運用の要諦やREIT市場の分析などはこの程度の期間ではとても習得できません。
特に投資家の資金を預かっている訳ですから、投資家の見方やREIT取引市場の動向等の情報は必須ですが、大半の新興銘柄は証券会社からの情報に頼るだけだと思います。
証券会社の情報を取るのは構いませんが、それだけというのでは果たして受託者責任を全うしていることになるのでしょうか。
一般的に資産運用会社は少人数で構成されていて、日々の運用業務で手一杯という状態ですから、ルーティンワーク以外は外部に頼らざるを得ませんので、アンテナを張る必要があります。
所が、実際は付き合いのある証券会社からの話だけというのが多いと思います。
REIT経験の長い既存銘柄は、証券会社の情報は当てにならないという事を肌で知っていますが、新興銘柄はそういう感覚も備わっていませんし、改めて専門情報を入手するという事もありません。
私はREITのセミナーを定期的に開催していますが、これに参加頂いている個人投資家の方に比べても、新興銘柄の資産運用会社の情報は貧弱だと思います。
投資家は、必要な経費を支出してもREIT専門情報入手をするという人が増えていますが、資産運用会社は専門と称しているにも拘わらず、経費の支出もなく努力も怠っているという面があります。
肩書が物言う日本では、専門家とは経歴や役職という感覚でしょうが、受託者責任という範疇で考えればそれでは済みません。 日頃の専門性向上の努力を怠って、損失を出したりした場合は問題になるケースも日本は甘いので助かっていますが、何時までもそれに甘えて専門性向上の努力をしない資産運用会社は困りものだと思っています。

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