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2016. 7.22.Up Dated.
地震リスクについて
 
 イオンリート投資法人が保有する「イオンモール熊本」が、熊本地震による被害で大きな特別損失を出すことになりました。地震による被害の修復工事費等の支出によって、平成28年7月決算で当期利益が ▲2,034百万円となったことで、無償原資を行って損失の穴埋めをしました。
地震の被害は物件所有者に帰属しますから、所有者=投資家ということで無償原資という選択肢になったと考えられます。この処理は間違ってはいませんが、イオンリート投資法人は海外のショッピングセンターも保有していますから、海外で起きた地震でも同様の処理が行われると想定されると、国内のみならず海外の地震リスクもストレートに投資家にヘッジされることになります。
一部の投資家からは地震保険の付保がなかったのかという指摘もありますが、ショッピングセンターのような商業施設の場合は殆ど地震保険は付保されていないのが現実です。仮に地震保険が付保されていたとしても、地盤液状化被害の全ては補填されませんから 今回の地震のように地盤液状化被害がメインである場合は所有者の負担が大きくなります。
投資法人の発表では地盤液状化による建物基礎沈下となっていますが、恐らく基礎は杭基礎ではなく一戸建てのような布基礎だったと考えられます。
建物の階数が2~3階程度の場合、通常の地盤であれば杭基礎を使わずに布基礎とすることもありますが、地盤が液状化すれば建物全体が不同沈下を起こしますので被害は大きくなります。
郊外型ショッピングセンターの場合は、強固な地盤に立地しているケースは少なく、埋立地や河川の土砂の堆積地等に建築される例が多いですから、地盤液状化リスクは高くなります。
また商業施設は不特定多数の顧客が訪れることで安全性も重視されますから、復旧は完璧を期す必要がありますので費用も嵩みます。

一方、ユナイテッド・アーバン投資法人が保有している「イオンモール宇城」の被害はそれ程でもなく、復旧費用も大して掛からないようでした。
恐らくイオンモール宇城の方は地盤の液状化が無かったのか、又は建物基礎が杭基礎で建物の不同沈下が無かったのだと思います。

このように、地震では地盤液状化による被害が大きくなる傾向にありますから、物件の空地面積が多い場合では、地盤液状化リスクを考慮する必要がありそうです。
被害の程度の違いはあっても、物流倉庫は地盤液状化リスクの高い場所に立地していますし、臨海部に立つオフィスビルや住宅もリスクがありますから、今後は地震リスクにつていも投資法人は神経質になるべきだと言えます。

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