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2016. 4.22.Up Dated.
大和ハウス系投資法人の合併について

 先日、大和ハウス系の大和ハウス・レジデンシャル投資法人と大和ハウスリート投資法人の2つの投資法人の合併が発表され、決算説明会に代えて合併説明会が行われました。
合併説明会には出席しましたが、その説明は今一つ要領を得ませんでした。
率直な疑問として、何故この時期に合併なのか?合併比率の1:2.2にはどういう根拠があるのか、これらについては明解な説明はありませんでした。

先ず、合併の是非については、長期戦略に立てば合併もありですが、野村不動産系の投資法人と異なり、こちらは両投資法人とも順調な運用を続けていて、市場評価もそれなりに高いですから、直ちに合併しなければならない事情はありません。
合併説明会では、資産規模の一挙拡大(合併によって5,000億円超の資産規模になる)と、大和ハウス・レジデンシャル投資法人の有利子負債比率(直近決算は54.8%)を下げることが出来るという説明が中心になっています。
確かに両投資法人ともREITの一つの壁である資産規模3,000億円には達していませんが、現在の市場評価であれば、多少の時間は掛かっても3,000億円までの外部成長は十分可能です。また有利子負債比率を下げる件は、増資を行うか、保有資産の一部を売却すれば可能ですから、全く手段がないわけではありません。
合併はやや唐突な感じも受けますから、少なくとも潤沢な内部留保を持っている大和ハウス・レジデンシャル投資法人側が希望したという事はなさそうです。
一方の大和ハウスリート投資法人も、上場後3年強ですし、特に問題を抱えている訳でもありませんから、今合併を行うというインセンティブはなさそうです。
そうなるとスポンサーの大和ハウス工業が仕掛けたのかという疑問も湧きますが、今回の合併によって直ちにスポンサーにメリットが生じるわけでもないので、スポンサーサイドも急ぐ必要はないとも言えます。
このように考えると、今回の合併には別のフィクサーの影が匂いますが、それが誰なのかははっきりしません。

次に、合併比率については、大和ハウス・レジデンシャル投資法人が投資口を4分割(2分割を2回実施)して、大和ハウスリート投資法人が2分割していますから、それを考慮すると合併比率は1:2が常識的な合併比率になります。
従って、敢えて大和ハウスリート投資法人の方を2.2として0.2ポイントのプレミアムを乗せた理由が分かりません。説明会では総合判断でそうなったとの説明ですが、これも良く分かりません。
大和ハウス・レジデンシャル投資法人の投資家からすれば、大和ハウスリート投資法人の投資家を優遇しなくてはならない理由も、そこまでして合併しなくてはならない事情もありませんから、これも疑問の一つです。
何れ両投資法人の投資主総会で合併可否の決を採りますが、果たしてこれらの疑問に応える説明が為されるのかは分かりません。
仮に十分な説明が為されないまま可決されるとしたら、何か大人の事情があるのではと勘繰りたくなりますが、それを推測すると更に別の側面を見ることになるので、現段階では単に合併スキームに疑問が残るというのが私の見方です。

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