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2016. 1.29.Up Dated.
日銀の資産買入れについて

 日銀が発表した1月の資産買入状況を見ると、REITは28日までに9回買入れを実施し、108億円分(12億円×9回)を注ぎこみました。
ETFの方も9回実施して3,174億円を投入していますが、こちらは年間枠の9.6%、REITは12%分をこの1月に使っています。
この消化率を見れば分かるように、日銀が1月は資産買入を活発化しているのは明らかですが、これは株式市場が低下基調になっている為です。
株式相場やREIT相場は市場取引の需給バランスと投資家の思惑によって上下しますが、これを意図的に変えようとするのが中央銀行の役割なのか疑問です。
特にREITのような配当型投資商品に対して、短期的な投資口価格上下を気にするのが中央銀行の責務とは思えません。結局は、政権におもねって、投資相場の見栄えを良くすることが日銀の役割となっている感じです。
勿論、緊急事態によって市場が混乱状態に陥った場合は、市場を落ち着かせるための介入は許容されるでしょうが、単に相場が循環的に変動する局面での介入は行き過ぎではないかと思います。
日銀からすれば、今は大事な時期で、相場がここで踏みとどまるか低下基調になるかの転轍機なのだという理屈もあるでしょうが、この考え方も突き詰めれば政権への援護射撃に他なりません。
一方、証券会社筋は、日銀のREIT枠の増額によって相場上昇エンジンにという期待もあるようですが、投資商品の実力や合理的な配当利回りを無視して、単に投資資金の流入量だけで相場が上下することを期待しているようでは相場師にすぎません。
専門家として投資家へアドバイスする立場の証券会社がこの程度ではお寒い限りですが、 それを黙認する日銀と政権が真剣に投資市場の育成と拡大を図っているとは思えません。
それでも視点を変えてみれば、今は単純な時代だとも言えます。 ○か×のデジタル思考しかなく、様々なバランス点を持つアナログ思考が出来ない人たちが増えているのだと思います。
確かにデジタルは簡単で楽ですが、世の中の面白みはアナログによってもたらせますから、デジタル思考で力んでみても、実態との乖離幅は埋まりません。
これも○×式の試験で良い成績を収めた者が秀才と認められた結果なのかもしれませんが、 私のような人間にはどうにも納得し難いのです。

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