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2015. 6. 5.Up Dated. |
REITの原点 |
REITとは投資家の為に作られた仕組みです。投資家は、投資法人という器を経由して不動産を保有し、その不動産から生じる収益を配当の形で受け取ります。 投資法人は器ですから、執行役員と監督役員3~5名だけで構成されている為に、実際の業務(不動産の取得や売却、保有不動産の運用や投資法人の運営等)は、資産運用会社に業務委託します。即ち、資産運用会社は投資家からの委託を受けて投資法人を実質的に動かしているのです。 この仕組みを前提に考えれば、資産運用会社は投資家の為に何が出来るのか、何が投資家利益に繋がるのかを、常に考えて行動する義務が生じます。 この辺りが株式会社とは大きく異なる点で、一般事業会社のように経営者・従業員の利益も考慮するという面がないのです。 所が、実際はどうでしょう。資産運用会社が投資家の為に常に働いているという見方が出来るでしょうか?投資家の為に何が最良なのか、次善は何かと考えながら行動している資産運用会社は何社あるのでしょうか? 一方、スポンサー企業への利益供与や自己保身の為に動いていると思われる資産運用会社はかなり目に付きます。 例えばここ1~2年活発化している増資ですが、増資は出資総額を増やしますから、投資家にとっては配当原資の低下に繋がります。 一般事業会社のように事業の多角化は行われず、不動産賃貸業だけで収益を稼いでいますから、出資総額の増加に合わせて収益を拡大するのは現実的には困難なのです。 従って、投資家の為に働いている資産運用会社は、増資をどのように考え、どう投資家利益の減少を防止するかを考えて実施する必要があります。 それでは、現実はどうでしょう。「REIT市場が好調な時は、高値で増資が出来るから今がチャンス」と言わんばかりの増資が目立っています。 一体何がチャンスなのでしょうか。先ず、増資による新規発行投資口を引き受ける証券会社は楽に投資家に販売できますから、まさにチャンスです。増資価格が高ければ高い程証券会社の手数料は増えますから、楽に捌けるときは何回でも増資して欲しいとREITに営業攻勢を掛けます。 一方、証券会社の利益に繋がるイベント(増資)を積極的に応じる理由は資産運用会社にはありませんから、普通ならば「そんなに増資したら投資家の分配金原資が減少してしまう」として証券会社の提案は拒否します。 所が、増資の際には配当原資の減少を少しでも抑止する為に、新たな不動産を取得しますから、この時スポンサー企業が保有している不動産を買ったり、又はスポンサー企業の売買仲介を通すことで、スポンサー企業に利益を落とせます。 特に昨今のようにREIT市場が好調であれば、以前に比べて高値で取得しても批判を浴びません。(尤もREITの不動産取得について批判する人は前述の理由から証券会社にはおらず、私の様な人間と、デットを貸す金融機関が審査するのみだと言えます) こうなると資産運用会社は親会社となっているスポンサー企業に良い顔が出来ますから、証券会社の営業攻勢に乗って増資を計画します。(資産運用会社の本音は増資ではなく、物件取得が本丸です) 財務指標の一つに払込資本利益率(経常利益/平均払込資本)という指標がありますが、 この数値は投資家への配当分配率を示します。(実際の投資家の分配率は払込資本利益率より若干低下します) 株式投資で言われているROEと近似の概念ですが、今のREITの全銘柄の平均値は5.5%/年前後で、高い投資法人は10%/年近くに達します。 一方、3%台/年に喘いでいる投資法人でも増資を繰り返していますから、こうなるとREITの平均値に近付くには減資しか残された手段が無くなります。 このような増資を平気で敢行する資産運用会社は、誰の為に働いているのでしょうか? 資産運用報酬を払っている委託者である投資家の為でしょうか、否、どの角度から見ても投資家の為に働いているとは到底思えません。 更に深刻なのは確信犯的に考えている資産運用会社も散見されることです。 こうなると受託義務違反とも言えますが、一体投資家の為に誰が抑止してくれるのでしょうか、監督官庁の金融庁はどうなっているのでしょうか。 アベノミクスのお祭り騒ぎを邪魔するとして動きを差し控えているようにも思えます。 この状態を放置するとかつてのファンドバブル期のように百鬼夜行とも言えるREITになってしまいます。 それでは元も子もありませんから、この辺りで何とかする必要がありそうです。 |
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