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2014.10.10.Up Dated.
ヘルスケアREITについて

 ヘルスケアREITの第一号案件である日本ヘルスケア投資法人の上場予定が発表されました。但し、REITと言っても上場時の資産規模は132.8億円と・星野リゾート・リート投資法人の上場時規模150億円と比べても更に小振りです。
元々ヘルスケア施設は、現在ある全物件を合計しても1,000億円に満たないと言われていますから、ヘルスケア特化型REITとしてはこれでもかなりシェアを持っているのかも知れません。
正確な数字は分かりませんが、日本のオフィスビルは300兆円程の規模と言われていますから、オフィスREITとは所詮比べるのは無理です。勿論、商業施設や賃貸住宅と比べるのも無茶な話ですから、全く独自のカテゴリーの小規模ニッチ収益不動産だと言えます。
従って、本来REITではメインの投資対象不動産にはなり得ませんし、まして特化型REITは無理があったのです。
それを国交省が後押ししてヘルスケアREITを作らせようとした背景は、オペレーション業者の規模が小さく、自己ポジションではこれ以上投資が出来なかったからです。
ヘルスケア施設は、市場としても未熟で、オペレーション業者の体力も弱く、市場が拡大しないという現状をREITという仕組みを使って変えようとしたからだと思われます。
こう書くとまともに聞こえますが、簡単に言うと投資家に未熟市場のリスクを付け替えて、拡大していこうと算段です。
これが株式市場であれば、その市場規模の大きさや多様性から許容できるかもしれませんが、REIT市場をターゲットにしたことが問題です。
REITはミドルリスク・ミドルリターンの投資商品ですから、未熟で市場規模も小さい分野はなじみません。しかも、本来は長期保有の個人投資家をターゲットにした仕組みですから、リスクの可視化が強く求められます。
元々、国交省はこういう視点が欠如していますから、REITの海外不動産の取得解禁も推進しましたが、多分投資と投機を同じように考えているからだと言えます。
それでも国交省の尻馬に乗って他にもヘルスケアREITの準備をしている所もありそうですが、1,000億円にも満たない規模の不動産を対象にした投資法人がいくつ出てくるのでしょうか。
尤も、粗製濫造でもどんどん施設を作ればもう少し規模は拡大しますし、相対的に経営の厳しいオペレーション業者の救済にはなりますから、国交省としてはそれで満足なのかも知れません。

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