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2014. 1.24.Up Dated. |
REITの外部成長とリスク(その2) |
REIT市場の好調を受けて、決算説明会でも外部成長についての質問が増えていますが、質問への回答は二分化しています。 一つは、上場歴が比較的長い投資法人の回答で、かつての浮沈を味わった経験から、市場の好転に踊ることなく、ポートフォリオNOI利回りを維持、又は、少しでも上昇させるような物件取得を行い、分配金の安定化を推進したいというものです。 これは、REITとしてはオーソドックスな回答であり、投資家は分配金の水準が安定していれば、投資時点での利回りが確保される為に、比較的長期に亙って期待投資収益が得やすくなる為です。 但し、そのような物件取得を続けるのは簡単ではなく、競争入札等では取得利回りの低下は必至なので、スボンサー等とのパイプラインを通じての相対取引や、注目度の低いセクターへの投資を開始する等の工夫が必要となります。 尤も、ここが資産運用会社の腕の見せ所ですから、運用経験を積んだ資産運用会社ならではの自信でもあると言えます。 もう一方の回答は、新興銘柄に多い回答で、利回りよりは質重視で取得をしたいとする答えです。 これも表面的には何となく尤もらしく聞こえますが、本音としては、市場の好調を受けて、その分スポンサーから高値で買いたいと考えているとも言えます。 上場時はIPOを確実に行う為に、スポンサーから利回り重視で取得したので、今度はその時の得べかりし利益を還元しようとする動きです。 不動産の質とは言葉では簡単ですが、尺度は任意であり、且つ、恣意的に捉えられますから、質と言っておけば、上場時組成資産と比べて低い利回りで取得しても良いだろうという判断です。 勿論、この選択は投資家の為ではなくスポンサーの為のものですから、本来は利益相反だとも言えなくはありません。 新興銘柄で投資口価格が上昇している投資法人は、その分期待利回りが下がったので、保有資産の利回りを下げてもバランスするという事ですが、それには永久にREIT市場が好調でなければならないのと、賃貸市場での競争力と収益が常に従前通り確保されているという前提が必要となります。 勿論そんな事はありませんから、ポートフォリオ利回りを下げれば、正味の分配金原資は減少しますが、REITではいくつかの手段によって当面保つ方法もありますから、短期には露呈しません。 短期に露呈しなければ良いだろうと、例えばスポンサー企業からの出向者ならば在任期間中だけを気にすれば良いので、この方向に流れやすいのです。 従って、投資家は外部成長路線を冷静に見極めて、後者の路線を表明している銘柄は疑って掛かる必要もあります。 REITは誰の為のものかは、投資の受け皿という機能を考えれば自明ですが、ややもすればスポンサーに偏りがちになるので、ここを見極められるか否かが長期投資のポイントになります。 |
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