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2014. 1.17.Up Dated.
REITの外部成長とリスク(その1)
 
 REIT市場の好転を受けて、昨年はREITの物件取得が史上最高額に達しました。
新規上場銘柄の組成資産を除いた既存銘柄の資産純増額(新規取得分−売却分)は1.58兆円になり、一昨年のマイナス(-103億円)を補いつつ資産規模を伸ばしました。
この外部成長に伴い増資によるエクイティの調達も7,200億円になり、外部成長と増資のサイクルが順回転になっていることが分かります。
この勢いで、2014年もREITは1兆円以上の不動産を取得するのではないかと予想されますので、不動産取引市場への影響は更に強まります。
これだけの量の不動産をREITが取得するのであれば、不動産価格の上昇を期待する向きもありますが、REITの内情を見れば、低い利回りで取得する余力は乏しくなっています。
特に、オフィスビル銘柄は決算毎にポートフォリオ利回りを低下させてきていますから、これ以上の低下は命取りにもなりかねないので、甘い取得は禁物です。
一方、レジデンス銘柄は目標としていた5.5%/年にほぼ達しましたので、この利回りを維持しながらの取得が加速しそうです。
このように見ると、不動産業界が期待するような価格上昇は余り見込めませんが、最近の投資法人の外部成長を見ていると、スポンサーからの取得が甘くなっている傾向があります。
特に、一昨年から新規上場した10銘柄の外部成長の中身が気になります。
投資口価格の上昇によって市場の要求利回りが下がったという前提で、新規上場時に比べて低い利回りの譲渡が目立ちます。
スポンサーとしては、新規上場時の組成資産はバーゲンしたのだから、その分を取り戻すという考え方なのかも知れませんが、ここで調子に乗ってしまい消滅した投資法人は過去に数銘柄あります。
新興銘柄はそういう苦い経験を経ていませんから、同じ轍を踏む可能性もあります。
REIT市場がこの先5年も順調とは言えませんから、下降局面に入った時に一挙に評価下がり、身動きが取れなくなることもあります。
そうは言っても、一般投資家にとってREITの外部成長を客観的に見るのは難しく、何が良くて何が悪いかの判断は出来ないと思います。
そこで一つの見方を申し上げると、上場後に投資口価格が大きく上昇している投資法人の外部成長にリスクが内包されています。
相対的に低い利回りでの取得を続けても、増資でプレミアムが付けば、EPS(1口当りの利益)は高く取れますが、一度市場が調整局面に入り投資口価格が下がると、途端に弱さが露呈します。
株式投資のように短期売買しか考えていない投資家にとっては、そんな事はどうでも良いでしょうが、本来のREIT投資を行う場合には、こういう点を冷静に見なくてはならないのです。

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