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2013. 5.24.Up Dated.
同時期のIPOとPO
 
 40番目の上場投資法人となる野村不動産マスターファンド投資法人の上場が発表されましたが、これとほぼ同じ時期に今年2月に上場したばかりの日本プロロジスリート投資法人の増資も発表されました。
調達予定額は、IPOの野村不動産マスターファンド投資法人が約1,300億円、POの日本プロロジスリート投資法人が約720億円と、2法人で2,000億円を超える規模となります。

野村不動産マスターファンド投資法人は、物流施設と商業施設を投資対象とした野村不動産系の3番目の投資法人で、資産運用は前2つの上場済投資法人と同じ野村不動産投資顧問が行います。IPO価格は1口10万円が基準となっていて、この基準価格にどの程度の上乗せが出来るかですが、調達規模を考慮すると11万円前後〜12万円程度ではないかと推測されます。
スポンサーである野村不動産が3番目の投資法人に「マスターファンド」の名称を冠したのは、既存の野村不動産オフィスファンド投資法人と野村不動産レジデンシャル投資法人の評価が芳しくないので、新投資法人の上場で巻き返しを図ろうとしているとも推察されます。
組成資産の内容を見ると、オフィスファンドとレジデンシャルよりは期待が持てそうですので、穏当な価格でIPOを行えば「マスターファンド」という名称に恥じない投資法人に成長する可能性もありますが、IPOで爪を伸ばすようであれば、既存組の二の舞になるかも知れません。従って、今までの資産運用の反省がどの程度反映されているかがポイントになります。

一方、日本プロロジスリート投資法人は第1回決算を待たずに増資を行うというやや異例な展開になります。
今回の増資では、上場時資産規模の1,730億円から一挙に3,000億円超になる予定ですが、発表された取得予定資産の内容を見ると、当初予定より早めたのではないかとも思われます。
順当に考えれば、早くても第1回決算(5月期)発表終了後の7月下旬〜8月位にPOを発表するスケジュールだと思えますが、市場の状況の良い時に稼ごうという意図も窺えます。
PO発表前の投資口価格は90万円台/口に達していましたから、IPOでは余り稼げなかった分を取り戻すという考え方もあるのかもしれません。
今回の取得予定資産の詳細情報は省略されていて、POに合わせた外部成長によってどの程度のパフォーマンスの変化が出るのかは定かではありませんが、恐らく従前のポートフォリオNOI利回りは低下するのではないかと推測されます。(投資法人側はPO後のポートフォリオ利回りの変化を発表していませんので、飽くまでも筆者の推測です)
スポンサーから見れば、投資口価格が短期間にこれだけ上昇したのだから、市場の要求利回りは低いと判断して、IPO時より高い価格で物流倉庫を譲渡出来ると判断したのではないかとも考えられます。

このようにみると、同時期になるIPOとPOのどちらが投資家にとって有利なのかは価格次第になります。
野村不動産マスターファンド投資法人が10万円/口に対して10〜15%程度のプレミアムでIPOが実施されれば、将来の伸び代も期待出来ますが、日本プロロジスリート投資法人の場合は、PO価格によっては伸びきった状態での増資となってしまう可能性もあります。
REIT投資の常道で見れば、IPOから僅か数ヶ月でIPO価格(55万円/口)に対して5割以上も高いPOは異常だとも言えなくはありません。
又、仮に今回のPOが成功したとしたら、日本プロロジスリート投資法人は日本ロジスティクスファンド投資法人やフロンティア不動産投資法人に匹敵する位置まで上昇し、今後もその位置に留まる事が出来ないとREITとしての順回転が出来なくなるというリスクが生じます。
投資法人の詳細な情報や実績がない状態で、そのリスクを長期の視点で判断しようというのは少し行き過ぎではないかとも思われますが、果たして結果はどうなるのでしょうか。

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