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2012.10. 5.Up Dated.
REITのPBR
 
 東証REIT指数が1週間連続で1,000ポイントを超えていますが、REITの投資口価格を別の視点でみると少し違った見方も出来ます。
その一つにPBRという純資産倍率があります。
ここでは、1口当りではなくREIT35銘柄の平均時価総額/平均純資産で見ると、平均値で90.35%、中央値で84.49%と全体に純資産価値をかなり下回っています。
一般的に純資産価値を大きく割り込むと、割安という見方にもなりますが、投資口が純資産を割り込むのは、いつくかの理由が考えられます。
その最たるものは、資産価値の目減りだと言えます。純資産の大半は資産の取得資金に充当され、不動産の形で保有されていますから、その保有不動産の価値が減少していると見れば、純資産価値を割り込みます。
然しながら、REITの期末評価額(不動産鑑定価格)は簿価と近似になっていて、9月末時点では期末評価額/保有不動産簿価は平均で97.12%です。
不動産鑑定価格が必ずしも時価だとは言えませんが、他に基準となる価格がないため参考にはなりますので、PBRが評価額/簿価をも下回っているのは、更に別のリスクがカウントされていると考えることが出来ます。
それは、恐らく収益減少リスクだと言えます。
各REITの決算データを見ていると、オフィスビルの賃料は依然として下落基調にあって、未だ底を打ったとは思われません。 これが時価総額が純資産価値を割り込んでいるのが主たる原因ではないかと考えられます。
その典型がグローバル・ワン不動産投資法人で、PBRは60.06%、期末評価額/簿価は106.38%ですから、明らかに収益減少リスクがカウントされています。
グローバル・ワン不動産投資法人の分配金は一時期2万円/口前後で推移していましたが、今は1.3万円前後まで落ちていて、2013年3月期の予想分配金も1.3万円を切っています。恐らくこのパフォーマンスの低下が大きく作用して、PBRを低下させているのだと考えられます。
グローバル・ワン不動産投資法人の保有オフィスビルの質はREITの中でも1・2位を争うレベルですから、質の高いビルの収益が回復に向かわなければ、オフィスビルの収益回復は期待出来ません。
従って、オフィスビル賃料が底を打ち、収益が回復すると見做されるようになるまではPBRが100%以下になるのも仕方ないとも言えます。そしてその時期は早くても2013年第2四半期以降ではないかと考えますので、もう暫くは様子を見ながらという推移になるのではないかと予想しています。

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