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2012. 6.29.Up Dated.
インサイダー情報について
 
 株式増資に伴うインサイダー情報の提供で、野村證券、SMBC日興証券、大和証券が摘発されました。これで国内三大証券が揃い踏みになりましので、インサイダー情報の提供は証券業界の営業手段として定着していたことが分かります。
証券会社は違法行為と知りつつ行っていたのですが、昨今の金融庁やSECの動向を見ればかなり甘い見通しで違法行為を行っていたと言えます。組織が違法行為を行うのは何処も同じ事情で、仮にバレたとしても会社自体は大した実損はないという計算が働いている為だと思います。勿論、当局による短期業務停止処分や課徴金制裁はありますが、経営陣に制裁が下されることもありませんし、このインサイダー情報提供により、他の投資家や、又は証券会社の株主から民事損害賠償を起されることもありませんので、高を括っていたとも言えます。
野村證券や大和証券の最終処分は未だ発表されていませんが、こういうケースでは、刑法で適用されている特別教育刑でなく、一般応報刑という考え方が妥当ですが、仮に処分を多少重くしたとしても再発防止になるかは定かではありません。
それは、証券会社にとってインサイダー情報の提供は最も有効な営業ツールであることと、当局以外に監視する主体がない事も関係しています。
関連するマスコミ等は普段は証券会社を非難するような記事は掲載しませんし、仮にインタビュー等でそういう部分があれば削除しますから、世間の監視機能は働きません。
従って、摘発されたのは運が悪いという見方も出来ますし、更に言えば、世間は証券会社のインサイダー情報提供を看過しているという思い込みもあると思います。
それらに加えて、のしかかる営業ノルマが違法行為に向かわせる決め手になったと言えます。この営業ノルマというのは、上層部にとって都合の良い制度ですから、広く使われていますが、私が会社勤務時代には、営業ノルマ制度は認めませんでした。
元々、上に能力があればノルマ管理等は必要ないのですが、凡庸な人材でピラミッド組織を築こうとすれば他に方法はありません。自らが率いる人材の質や能力を把握出来れば、どの程度の成果を生むかは予測できますから、不足する部分は、他の方法で補うしかありません。他の方法と言うのは、経営陣の力量によって選択肢が決まりますから、これでは上層部は困ります。
こう書くと会社勤務時代の事が思い出されますが、組織というのは必ずしも進歩するものではないなと感じられます。

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