コラムトップ
2012. 6. 8.Up Dated.
投資目標利回り
 
 投資家が求める利回りは、その主体や属する国・地域や資金によって異なります。
国内で見れば、今年は10年物国債の利回りが1.0%を切っている状態ですから、コア投資であれば3.5〜5.0%程度が妥当な水準であろうと思われます。
米国であれば、10年物国債利回りが1.6%台、30年物国債が2.7%程度ですから、せいぜい6%程度でしょう。
一方、EUでは独国債が1.2〜2.0%の範囲で動いていますので、やはり米国並みだと考えられます。
然しながら、投資資金を動かすファンドになると、エクイティが求める利回りに自分達の報酬を上乗せしますから、倍の目標リターンにも達し、これらのファンドの要求利回りは10〜12%にもなります。
これは常識的に考えれば無茶な要求だとも言えますし、欧米国内では実現出来る水準ではありません。
それでも、欧米以外の国に対しては、この水準を要求することでファンドの報酬を稼ぎ出す構造になっていると言えます。
実際にREITが海外ローンチを行う際は、10〜12%を要求する投資家を対象とはしませんし、前述の6%程度の要求利回りを持つ投資家とコンタクトを取ると思います。
これだけの要求利回りの差は一種の関税のようにも思えますが、潤沢な投資資金を擁しているからこそ言えるものなので、資金が細れば圧力が掛からなくなります。
恐らく今後は欧米を主体としたグローバル投資マネーの力が弱まるでしょうから、少しずつ内外格差が是正されると思いますし、これだけの富を海外に移転するのはどの国にとっても不利益ですから、グローバルマネーの粗っぽいビジネスに付き合うのは避けたくなります。
国内で見ても、日本の投資市場から10%もの利回りを吸い上げられるのでは堪りませんし、その半分でも安定的に得られるのであれば、国内投資資金にとって文句はありません。
このように考えると、グローバルマネーを頼りにする限り、多くの富を吸い上げられてしまうことになります。
株式市場は既に海外資金のシェアが50%を超えたようですので、この状態では歯止めが利きませんが、市場規模は格段に小さいもののREIT市場は未だ海外資金は40%程度が上限で、それに未開の個人投資家が存在しますから、国内の個人投資家を惹きつけられれば、REITと投資家双方にとって、Win-Winの状態を作れます。
その為には、国内個人投資家の開拓に注力して海外資金の自由にされない市場を作り上げる必要があります。
仮に、長期保有の個人投資家のシェアがREITの発行済投資口数の20%を超えれば、海外資金は属する国と同水準の要求利回りを持つ投資家が主流になると思いますので、市場は安定します。
それにREITは株式と違って市場の安定は投資家にとって必要な要素ですから、このような方向に進むのはプラスに作用します。
こう考えると、REITは株式市場の轍を踏まないような戦略が求められると言えるのです。

Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.