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2012. 5.18.Up Dated.
EU金融不安と海外ローンチ
 
 ギリシャの債務問題が不透明な状況になったことで株式市場が不安定になっていますが、その影響でREITもやや下がっています。これは、REITの主要投資家である外国法人の売りが強まっていることが原因だと考えられます。
現に東証の投資部門別売買状況を見ると、4月は外国法人が大幅売り越しになっていて、これを国内の銀行と投資信託が買い支えるという構造になっています。 外国法人の売りは5月も続いていると予想され、日銀のREIT取得など買い支えの動きも実施されています。
但し、冷静に見れば、EUの金融不安は投資家サイドの問題であって、REIT側に直接影響を与える因子ではありません。 勿論、無理にこじつけようとすれば、それなりの理屈は付きますが、日本のような期間内固定の賃貸者契約にこれらの要素を結びつけるのは合理的ではありません。

一方、アクティビア・プロパティーズ投資法人のIPOが海外でも行われるようなので、この行方は気になります。
海外ローンチは米国と欧州で375億円程度を予定しているようですが、この時期に日本のREITがどのように見られるのかは注目です。
相対的に安全な投資先と見られれば、このローンチは消化されるでしょうが、目論見書を読む限り、それらを裏付ける情報がありません。個別物件の収益や取得価格の妥当性は不動産鑑定のみでの説明になっていますが、この資料が果たして海外に通用するかという興味があります。
また、オフィスビル2012年問題には何も触れられていませんから、オフィスビルを8物件保有(所得価格比では全体の28.5%)しているポートフォリオに対する影響見込みも聞かれるだろうと思います。 保有オフィスビル8物件中、4物件の稼働率が90%以下になっていますから、これらの見通しや賃料水準の妥当性が問題になるかも知れません。
このように投資家にとって必要な情報が充足されない状態でのローンチの行方は大変気になります。
これは国内投資家にとっても同じですが、ローンチの規模からみて、金融機関等の機関投資家向けの募集が主流になると思いますので、こちらは阿吽の呼吸で何とかなるかもしれません。
何れにしろ、この時期のIPOは色々な要素を表示してくれそうですので、非常に注目したいと思います。

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