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2012. 3.23.Up Dated.
地価の見方
 
 3月22日に地価公示が発表されました。地価という見方にはかなり違和感を覚えます。丸の内が銀座と並んで最高価格だと発表されましたが、オフィスビルや商業施設の取引で地価の意味があるのかと感じます。
例えば、丸の内・大手町地区でオフィスビルを取得(空地は存在しない)する際に「この土地は坪いくら」という見方をすることはないと思います。
普通は、利回りが何%という見方で、その利回りの根拠となっている賃料や稼働率、そして周辺の賃貸動向を精査するのが今の取引です。土地だけの取引は、REITでは底地取得がありますが、これについても坪いくらという見方はせず、利回りで見ています。
単純に土地価格で取引をするのは、都市型狭小戸建の業者と個人ではないかと思います。
私の居住する地域では、都市型狭小戸建が盛んで、何時も何処かで建築中の物件があります。昨年には隣接地が売却され、その業者が挨拶に来られたので取得価格を聞いたら、ほぼ私の予想の範囲でした。彼らが言うには、土地価格は「想定建売販売価格−建物建築費−利益・経費」で算出しているので、最も重要なポイントは想定建売販売価格だそうです。この価格見通しを間違えるとデッド・ストックになってしまいますから、地域の需要動向を熟知していないと事業が成り立たないので、ある程度地域を決めて事業展開を図っているとの事でした。
このように、戸建業者でさえ、土地価格ありきではなく、計算式から導き出される数字でしかない価格を大仰に調査し発表する意味は何かと考えてしまいます。
唯一活用できるのは、個人が保有する不動産の大凡の価値を計れることだと思いますが、その意味では丸の内等の業務地区の地価公示は必要ないと思います。
こういう場所の不動産取引で個人が主体になるケースはなく、大半は収益用不動産の取得を行う事業者ですから、地価公示を使うことないだろうと思います。
活用するのは、国交省が管轄する不動産鑑定業者ですから、極端に言えば、特定業者の業務に資する為に税金を投入しているとも言えなくはありません。
地価公示を全て廃止すべきだとは言いませんが、活用する主体を考えて、地域を絞って調査するのが妥当だと思います。
また必ずしも毎年行う必要もありません。個人が保有不動産を売却する際は不動産仲介業者に依頼するので、彼らは地価公示がなくても価格査定は出来ます。
こう考えると、誰の為に行っている地価公示なのか分かりません。企業には時価会計の導入が始まっていますが、不動産の時価の算定に際して国が地価公示価格を保証する訳でもありません。
時勢の流れを理解せず、慣習として実施している地価公示制度を温存するのは行政とニュースとして価値を認めている一部のマスコミの為だとも言えなくはありません。
不動産を管轄する国交省は、地価公示制度より検討すべきもっと大事な制度が幾つもありますが、それらを放置して旧態依然のままでいるのは問題です。 尤も、こんな事をいくら指摘しても既得権を離すことはないでしょうから、政治がしっかりと論議すべき事だと考えます。

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