コラムトップ
2012. 3. 9.Up Dated.
REITのパフォーマンスを考える
 
 投資家にとってREIT投資のリターンを見るには、インカムゲイン(配当収益)とキャピタルゲイン(投資口価格の上下)を足した総合収益になりますが、比較的長期で保有していると、総合収益の算定がやや面倒です。 またキャピタルゲインについては、日々投資口価格が変動しているので、どの日又はどの月の平均値を使うかによってもかなり上下するのと、投資口価格は常に過渡的な状態なので、将来の変動傾向を加味したりすると益々難解になります。
従って、REITの取引市場を見ると、銘柄別の実績総合収益によって投資口価格が形成されている訳ではなく、どちらかと言えば銘柄への信頼感と安心感の多寡によって評価される傾向があります。
例えば、REITの中で最も高い評価を受けている日本ビルファンド投資法人の実績総合収益を見ると、以下のようになります。

前提1; 2010年3月に投資口を購入(購入価格は3月の平均価格で算出)
前提2; 2012年2月末までそのまま2年間保有(投資口時価は2012年1月〜2月の平均値で算出)
この前提で、総合収益を計算すると、
@ 購入価格  779,429円/口(2010年3月の平均投資口価格)
A 時価     682,175円/口(2010年1月4日〜2012年2月29日までの平均市場価格)
B 分配金    第18期(6ヶ月分相当)    17,125円/口
          第19期(6ヶ月相当分)    15,495円/口
           第20期(6ヶ月相当分)    15,138円/口
          第21期(6ヶ月相当分)    15,200円/口
           計(2年相当分)        62,958円/口

  a. インカムゲイン              8.08%(年換算4.21%)
  b. キャピタルゲイン(A−@)     △12.48%(年換算△6.24%)
  c. 総合収益(a+b)           △4.40%(年換算△2.20%)

以上のように、残念ながらこの期間で見ると総合収益はマイナスとなりますが、今後の投資口価格の戻りを期待すれば、異なった計算になります。また、ここ半年ぐらいのREITの低迷を見れば、このようなパフォーマンスになるのも仕方ないとは言えますが、恐らく投資家自体こういう風に総合収益を計算して投資判断を行っていないのだとも思います。
日本ビルファンド投資法人の総合収益がマイナスであれば、他の銘柄も同じかと言えば、必ずしもそうではなく、中には年18%ぐらいの総合収益の実績を持つ銘柄もあります。
勿論、総合収益だけでREITの投資判断をするのではないでしょうから、現在の市場評価が間違っているとは言えません 然しながら、過去の実績も加味して評価するのは合理的ですから、せめて実績を60〜70%、将来性を30〜40%程度のバランスで見るのも一つの方法ではないかと思います。

Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.