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2012. 2.10.Up Dated.
オフィスビルの課題
 
 先週のコラムで、オフィスビルの2012年問題に触れましたが、引き続きオフィスビルの今後について所感を述べます。

今までは収益用不動産としてはオフィスビルが最良とされてきて、中でもAクラスビルが高い評価を得ていました。勿論これが誤りではありませんが、REITのようにポートフォリオを構成する主体では、不動産単体の評価をそのままポートフォリオに当てはめるのは早計です。
REITや私募ファンドでは、S又はAクラスビルだけで3,000億円以上のポートフォリオを構成するのは至難の技ですし、仮に可能であっても分散効果が弱くなり、市場変動に対して敏感になってしまいます。
今までこの事を余り考慮しなかったのは、オフィスビルは弱含みになっても、何れは反転し賃料も上昇するという循環変動を前提にしていたからです。
今でもオフィスビル賃料は以前の水準近くまで戻ると考えているREITも多く、このような希望的観測が決算説明会では述べられます。
これは一般企業であれば問題はありませんが、REITのように他人の資金を預かっている投資法人から運用業務の委託を受けている資産運用会社では疑問が生じます。
良くなるという希望的観測を前提にして運用を行うのは決してプロとは言えませんし、それが全て他人のリスクに帰属するとなれば、やはり問題です。

極力希望的観測を排除して安定運用を目指すのがREITの責務ですから、オフイスビルセクターについては、再度冷静になって考える必要があります。
先ず手始めに競争力の弱いビルを整理することも考えなくてはなりません。
以前は、オフィスビル市場が好調になれば、それはオフィスビル全体に及びましたから、競争力の弱いビルを保有していても、ポートフォリオでカバー出来ました。
然しながら、市場が構造変化を起して、レジデンスのように常に厳しい競争に晒されるとなるとこうは行きません。
但し、整理するとなると損失も生じますから、合併による負ののれん代を手当てする必要もありますが、これはどの銘柄でも出来る事ではないので、REIT業界は利益の一部を内部留保出来るよう当局に要請しています。
私はこの案には反対です。
先ず安易過ぎる方策ですし、特段の努力の必要なく出来る案です。
元々、REIT設立の際に、資産運用会社は様々なリスクを見越して安定運用を目指すと表明していますので、市場の変動もその範疇になります。
また内部留保は投資家に帰属するものですから、それを資産運用のショックアブソーバーに使われては、REITの趣旨に反します。
REITの中には、様々なリスクを考慮して数年前から合併に積極的になって、内部留保を得た銘柄もありますから、REITに何の対策もなかった訳ではありません。
何も動かず先手で動けなかったREITが内部留保を求めているようにも思えます。
こういう甘えた考え方で運用を続ければ、力は付きませんし、将来も同じことの繰り返しです。
行政当局にとっても護送船団方式は遠い過去の物になっていますから、今更昔の亡霊を引っ張り出すのは止めてほしいと思います。

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