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2010. 8.27.Up Dated.
不動産投資とREIT

 円高の影響もあって株式市場が低迷していることで、手堅く配当金狙いの投資のREITに関心が集まっているようです。
投資雑誌等もこの時期は株式よりもREITや不動産投資に注目しているようで、猛暑の中取材依頼が複数続きました。
これらの雑誌の特集では不動産投資とREITを取り上げるようですが、私の自論は、個人には実物不動産投資を勧めないという事なので、半分はその説明になります。
REITはインカムゲイン投資なので、配当利回り等を参考としながら、銘柄を選別する事が出来ますが、一方の実物不動産投資では、妥当な利回りという標準値がありません。
既にREITの利回りは年換算で4.3%〜7.0%の間に数多く分布していますから、これと比較すれば、個人に勧められる実物不動産投資の利回りは遥かに高くなります。
更に、換金性を比べれば実物不動産投資は圧倒的に不利ですし、又、不動産投資の基本とも言える分散が全く利きませんから、理屈では無謀な投資の範疇に入ります。
まして投資金額がREITに比べると100倍近くになる訳ですから、リスクもその分高くなりますが、リターンはREIT並みかそれ以下です。
それでもなお、不動産投資を勧める輩が後を絶ちません。
普通に考えれば、個人に数千万円単位の投資を勧める事自体おかしいのですが、対象が不動産となると感覚が麻痺するようです。
唯一の根拠は、価格の上昇だと思いますが、今日これ程不確かな見通しはありません。
かつて不動産価格を上昇させたGDPは1990年代から500兆円前後で横ばいになっていますから、何を根拠に不動産価格が上昇するというのか分かりません。
投資用マンションというのもかなり供給されていますが、REITの配当は10%の源泉徴収を引かれるだけで他の費用は掛りませんので、手取を比べれば投資用マンションも論外です。
また、一戸だけを買っても何の分散も働きませんから、不動産投資を理解しているはずの大手デベロッパーがこの分野に出てくることもおかしいのです。
恐らく儲かれば良いということなのでしょうが、理屈に合わない商品を市場に出すのは見識を疑います。
そんな時間と人手があるならば、もっと不動産投資を勉強してREITに肩入れするなり、長期運用型の不動産ファンドを立ち上げるような事に注力して欲しいものです。

 
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