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2010. 2.12.Up Dated.
不動産取引の低迷と不動産業のあり方

 昨年12月に、東京駅八重洲口のパシフィックセンチュリープレイス丸の内をセキュアード・キャピタルが1,400億円で取得しましたが、これ以外に目立つ取引がありません。
既にかなりの数の不動産私募ファンドが償還を迎えているはずですから、もう少し取引が出ても良いのですが、ノンリコースローンのレンダーがテール期間に入っているようで塩漬けになっていると思われます。
REITの取得を見ても、スポンサー企業との相対取引が中心ですから、必ずしも取引内容が実勢を表していません。
一方、金余りの中でエクイティはかなり積極的になっているようですが、デットが付いてこないので、中々不動産取引が実現しません。
中には、オール・エクイティで取得しようとするファンドもあるようで、先日もそのような話を持ち歩く不動産業者が居ました。
然しながら、これらの話は殆ど実現しないだろうと思います。
海外勢がオール・エクイティで取得すれば、為替レートが100%利いてしまいますから、転売型取得でない限り、為替変動が大きくなって、収益ボラティリティが大きくなります。
通常、ファンドの不動産取得は現地通貨でデットを引いてレバレッジを掛けますが、これは為替リスクを小さくする狙いもあります。
又、国内不動産のパフォーマンスの推移を客観的に把握出来ずに動けば、期待した投資効果が得られないというケースも生じます。
それでも、「良さそうな物件を買って、不動産の回復を待って売りましょう」的な考えで動く業者も居ます。
これでは私募ファンドが犯した過ちの繰り返しですが、学習効果の弱い不動産業者ならではです。
こんなことを繰り返していると、景気がかなり良くならなければ不動産は低迷したままになります。
そして、塩漬けになっているノンリコースローンの不良債権化が進みますから、金融に跳ね返り、益々デットが出にくくなります。
こういう負のスパイラルを起こすのは、そのメカニズムが自動的に起こすのではなく、実は人間の動きによって生じます。

このように考えると、不動産業者のあり方から再検討する必要があります。
宅建資格と免許さえあれば、どんな取引にも介在出来るのが今の制度ですが、そろそろこの制度を変える必要があります。
一般の不動産業者は個人仲介分野と賃貸斡旋業務に限定し、法人仲介はもっと厳しい資格にするのも一つの方法です。
今後、海外からの不動産取得ニーズが増えることを想定すれば、質の高い業者に限定した方が国益に適います。
IT分野を見ても、資格は細分化されていますし、それぞれの分野で特化しつつありますから、不動産も考え直すべきです。
資格好きな国交省は、やたらと新たな資格を創設していますが、根本に当たる不動産取引の分野は手つかずになっています。
大型取引にはどんな知識や見識が必要なのかが分からないことと、不動産業者の既得権がそれを阻んでいますが、当局もそろそろ戦略的な視点で考える力を付けなくてはいけないのではと思います。

 
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